行き場を失くした私を拾ってくれたのは、強くて優しい若頭の彼でした
「あの、着替え、用意してくださってありがとうございます」
「いいって。それじゃあ、部屋に行こっか」
「は、はい」

 わざわざ待っていてくれるなんて優しいなと思っていたのだけど、これはそういうのとは違うとすぐに分かることに。

 再び相嶋さんの部屋までやって来た私たち。

 渡利さんが用意してくれたらしいミネラルウォーターのペットボトルがベッド脇のチェストの上に置かれていた。

「一応、飲み物用意しておいたから好きに飲んで。兄貴も言ってたけど、戻りが遅いから気にせずベッドで眠っていいからね。何かあったら声掛けて。俺、部屋の外に居るから。それじゃあね、おやすみ〜」

 そして、流れ作業のようにひと通りの説明を終えた彼は私を残して部屋を出て行ったのだけど、出る間際に言った通り、渡利さんが部屋の外に待機している気配がする。

(……私、もしかして監視されてる?)

 さっきお風呂を出た時はわざわざ待っていてくれたのかと思ったけれど、そうじゃなくて、私の動向を監視しているのだと悟る。

(まあ、そうだよね。初対面だし、得体が知れないものね)

 それについてはお互い様だし、私は調べられて困るようなことも無いから気にはしないけれど、見張られているのは何だか落ち着かない。

 それならばと私は部屋のドアを開けて、「渡利さん、ちょっといいですか?」と部屋の前に座り込んでスマホを弄っていた渡利さんに声を掛けた。
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