行き場を失くした私を拾ってくれたのは、強くて優しい若頭の彼でした
「あの」
「ん?」
「相嶋さんって、何をしている方なんでしょうか? その、先程も怪我をなさっていたし……」
「……ああ、うん……まあ、それについては後で兄貴から直接聞いて? 俺から話すことじゃないからさ」

 そして、可能であれば相嶋さんがどんな人なのかを聞けるかと思ったのだけど、そういうことは本人から聞くようにと言われてしまった。

「分かりました。すみません」
「謝らなくていいよ。ってかさ、心ちゃんっていくつ?」
「二十歳です」
「そうなんだ? 俺、二十三歳で歳は近いし、そんなに畏まらなくていいよ。ね?」
「は、はい……」
「ま、すぐには無理かな? けど本当、畏まらなくていいから。慣れたら敬語もいらないよ」
「ありがとうございます、そう言って貰えると助かります。行き場が無くて置いて貰えるのは有り難いんですけど、やっぱり不安があったので……」
「はは、そうだよね。それに急に男所帯の家に住むなんて戸惑いしかないだろうしさ。あ、ついでに苗字じゃなくて名前で呼んでくれていいよ。俺、苗字で呼ばれるのあんまし好きじゃないんだよね」
「そうなんですね……それじゃあ、七星……さん、でいいですか?」
「うん、まあ別に『さん』も付けなくていいけど……心ちゃんが呼びやすいのでいいからそれで」

 相嶋さんについては聞けなかったものの、渡利さん――改め七星さんはフレンドリーで話しやすく、おまけに歳も近いので、不安はあるけどやっていけなくはないかなと思えて少しだけ安心することが出来た。

「さてと、そろそろ寝た方がいいよ、眠いでしょ?」
「……はい」
「まあ、見張りたくはないんだけど兄貴の指示だから部屋の外に居させてもらうね。それじゃあおやすみ〜」
「はい、分かりました。おやすみなさい」

 暫く話をした後、何度か小さな欠伸をしている私を見兼ねた七星さんに寝るよう促され、挨拶を交わしてから部屋を出て行く彼を見送った私は申し訳無いと思いつつも、ベッドを使わせてもらうことにして早々に眠りに就いた。
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