行き場を失くした私を拾ってくれたのは、強くて優しい若頭の彼でした
「……あの、気を悪くされたらすみません……。その、相嶋さんは、何をなさっている方なのかなって……気になってて……」

 相嶋さんは私が一番知りたいことを解っている、それを表情から感じ取れたので質問をしてみる。

「別に隠すつもりもねぇからはっきり言う。俺は蘇我組(そがぐみ)っつー組織に身を置いてる。七星たちも同じだ」
「蘇我組……」
「ま、簡単に言えば俺らは普通とは違う。法に触れねぇ、ギリギリの事をする組織の中で働いてる。怖いか?」
「……その、怖くない……と答えれば嘘になります。正直、怖いです……」
「まあ、カタギの人間からすりゃ、真っ当な感想だろうな」
「……でも」
「ん?」
「……組織についてはよく分からないけど、相嶋さんが良い人だということは分かるので、相嶋さんのことを怖いとは思いません。勿論、七星さんたちのことも。それに、見ず知らずの私を嫌な顔一つせずに迎え入れてくれたことにも、本当に感謝しているので……」

 私の思っていた通り、相嶋さんは極道の世界を生きる人だった。

 知らない世界を怖いと思うことはきっと普通のことで戸惑う気持ちは拭いきれないけれど、それでも、相嶋さんたちのことを怖いとは思わないから、そのことだけは分かってもらいたくてきちんと伝えると、

「お前は変わってるな。そんなことを言われたのは初めてだ。お前の言葉を聞いたら、七星たちも驚くだろうよ」

 相嶋さんの表情は緩み、笑顔を見せてくれた。
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