行き場を失くした私を拾ってくれたのは、強くて優しい若頭の彼でした
「さてと、それじゃあ次は心の番だ」
「え?」
「まあ、調べることは簡単なんだが、それをするのは違う気がするからな……お前のことはお前の口から聞きたい。回りくどいことは好かないから単刀直入に聞くが、お前は何故、死のうとしていたんだ?」

 八雲さんは私のことについて知りたいようで、何故死ぬつもりだったのかを尋ねてくる。

 死にたい理由なんて隠すつもりはないから、私は八雲さんの瞳を見つめながら、事の全てを包み隠さず話していく。

 両親のこと、祖母や伯母のこと、就職してからのこと、元彼に騙されたことの全てを――。

 その間、ただ黙って私の話を聞いてくれていた八雲さん。

 こうして自分の過去を人に話したのは初めてで、正直どう思われるか不安だったけれど、話を聞き終えた八雲さんは、

「――そうか、それは辛かったな。お前の事情を知らなかったとは言え、あの時軽率なことを言ってすまなかった。お前はお前なりに悩んで、決心した上であの場所に居たんだな」

 自分の発言を謝罪した上で、私の身体を抱き締めてくれた。

「今までよく頑張ったな。色々なことが重なれば、そりゃあ死にたくもなるよな」
「……っ」

 抱き締めてくれた八雲さんは、『頑張ったな』『偉かったな』と言いながら優しく頭を撫でてくれる。

 こんな風に慰められるとは思っていなかったからびっくりしたけど、心地良さと暖かな温もり、そして何よりも、『頑張った』『偉かった』と言われたことが嬉しくて、これまで一生懸命生きてきたことが報われたような気がして、自然と涙が溢れていた。
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