行き場を失くした私を拾ってくれたのは、強くて優しい若頭の彼でした
「兄貴の家で一番初めに住み始めたのは俺なんだ」
「七星さんが?」
「うん。俺が兄貴に出逢ったのは今から約七年前、一六の頃だった」
「一六って言ったら、まだ高校生ですよね?」
「うん、高一だった。俺の家、母さんが居なくて親父と二人きりだったんだけど、俺が高校入る前から金だけ置いて家には殆ど寄り付かなかったんだ。彼女いたからさ」
「そう、なんですか……」
「まあ別に金さえ置いてくれてりゃ良かったし、一人は慣れてから文句も無かったけど、やっぱり親が居ないと部屋は溜まり場になるんだよ。俺は素行が良い方じゃ無かったからつるんでたのは当然不良だし、家に居たくねぇ先輩とかが俺の家に来ては女連れ込んだりやりたい放題。夜遅くまで馬鹿騒ぎしてたりで当然隣近所からは苦情が来てさ……適当にあしらってたけど親父に連絡がいって大激怒。それが原因で大喧嘩した俺はそのまま家出したんだ」
「家出……。それじゃあ、その時に八雲さんと出逢ったんですか?」
「そう。しかも荒れてた俺は自ら色んな奴に喧嘩吹っかけて、途中ボコられて路地裏に倒れてたところを、兄貴が助けてくれたんだ。そこがちょうどうちの組のシマってのもあって、見回りの途中だったからね」
「そうだったんですね」
「ボロボロになってた俺に兄貴は色々聞いてきた後で、『お前みたいな子供(ガキ)が出歩いていい時間じゃねぇから早く帰れ』って説教してきて、家出してるから『帰る場所なんてねぇんだ』って言ったらその後は何も聞かずに自分の家に来るよう言われて付いて行った。あのデカい家に一人で住んでるとか言うから金持ちなんだと思ったけど、まさかヤクザだなんて思いもしなかったから聞いた時は少しビビったけどさぁ、見ず知らずの俺を一晩置いてくれて、飯まで出してくれて、俺もこういう人の元で何かしてぇなって思ってさ、一旦帰って親父に学校辞めることと働きながら一人でやっていくことを話して、正式に家を出た。そして、もう一度兄貴の元を尋ねて弟子入りさせて欲しいって頼んで今に至るってわけ」

 七星さんと八雲さんが出逢った経緯を聞いた私はとにかく驚きしかなかった。
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