行き場を失くした私を拾ってくれたのは、強くて優しい若頭の彼でした
「ま、弟子入りっつっても蘇我組は一六の何も知らねぇ子供(ガキ)は雇わねぇって兄貴から言われてさ。とにかくまずは社会で働く厳しさを学べって言うから俺は兄貴の家で住み込んで、家事をやる傍ら蘇我組が管理する店でバイトさせてもらって、十八になったタイミングで正式に蘇我組の一員として雇ってもらえたんだ」
「そうなんですね。その後は、どなたが八雲さんの家に来たんですか?」
「愛斗だよ。愛斗は俺とほぼ同時期に蘇我組に加入してきたんだけどさぁ、俺より二つ年上だったから結構見下されてウザかったなぁ。頭良いから兄貴も結構気に入ってたし。家に置くってなった時も、俺の方が先に住んでたのに偉そうだし」
「そ、そうなんですか……。でも、お二人は仲が良いのかと思ってました」
「あーまあ今は普通に仲良いよ。俺と愛斗はよくペア組まされてるから必然的にね。仲悪いと仕事にも支障出るから腹割って色々話したら分かり合えたって感じかな」

 七星さんと御堂さんは初めこそ仲が悪かったものの、今では分かり合える存在になったようで、私にはそういう存在が居なかったこともあって羨ましいなと思う。

 そして、そんな二人の蟠りを無くしたのは恐らく八雲さんで、やり方が上手いんだろうなと彼の部下の育て方に深く感心した。
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