行き場を失くした私を拾ってくれたのは、強くて優しい若頭の彼でした
「……悪ぃな……」
「いえ……その、早く病院に行った方がいいと思います……救急車、呼びましょうか?」
「いらねぇよ。少し休めば良くなる」
「いや、無理ですよね? 血が出てるし、早く手当てをしないと……」
「血はとっくに止まってるから問題ねぇよ。んな事より、お前こそ考え直せよ。死んだら悲しむ奴だっているだろ?」
「…………そんな人、いません。私が死んでも、悲しむ人なんていないんです。だから、いいんです」
「いや、よくねぇだろ。つーか一旦落ち着けよ。な? お前……家族は?」
「いません」
「家は?」
「引き払いました」
「仕事は?」
「辞めました」
「……名前は? 歳はいくつだ?」
「……雛瀬(ひなせ) (こころ)、二十歳です」
「……訳ありなのは分かった。けどな、だからって何も死ぬことはねぇだろ?」
「居場所が無いのに、生きている意味もありません」
「居場所がねぇなら、探せばいい」
「……無理ですよ、そんなの」
「無理じゃねぇよ。つーか、やりもしねーで無理とか言うな」

 急に説教じみたことを言い出した彼。

 心配してくれているのかもしれないけれど、正直放っておいて欲しい。

 何も知らないくせに、偉そうなことを言わないで欲しい。

 居場所が無いなら探せばいいだなんて、そんなの、恵まれた人生を送っている人が言う台詞だと私は思う。

 私みたいな人間の居場所なんて、どこを探しても見つからない。

 だって、今までがそうだったんだから。
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