行き場を失くした私を拾ってくれたのは、強くて優しい若頭の彼でした
「ふざけたことしてんじゃねぇよ! 目の前で死なれたら、寝覚め悪ぃだろーが!」

 寸前で私の身体は相嶋さんに抱き留められて引き戻され、彼と共に屋上の地面に倒れ込んだ。

「……っ、なんで、邪魔するの……っ、関係ないじゃないっ!」

 そう訴えつつも、私の身体は震えていた。

「ったく、馬鹿だな、こんなに震えてんじゃねぇか。怖かったんだろ? 無理すんなよ」

 相嶋さんは私を抱き締めたままで身体を起こすと、背中を撫でながら優しく声を掛けてくれる。

「何があったか分からねぇが、命を粗末にすんな。人間、死ぬ気があるなら何でも出来んだろ? こんなとこから飛び降りる勇気があるなら尚更だ。その勇気を生きる為に使え。行き場がねぇなら俺の元へ来い。だから、考え直せよ――心」
「……っ、うっ……ひっく……つ」

 そんな風に優しい言葉を掛けられた私の瞳からは大粒の涙が溢れては零れ落ちていく。

 分かってた。

 死んだって何もならない、全てが終わるだけだって。

 悲しむ人もいないから、ひっそりと死んでいくんだと。

 だけど本当は、悲しかったし、淋しかった。

 そんな最期は迎えたく無かった。

 屋上から飛び降りるのだって、本当は怖くてたまらなかった。

 本当は、生きていたかった。

「相嶋さん、私……っ、私……」
「泣きたいだけ泣いとけ。そんで、死にたい気持ちも今ここに置いて行け。俺がお前に新たな人生を与えてやるから、俺に付いて来い心」
「……っ、ありがとう、……ございますっ」

 不幸な星の下に生まれた人間に、幸せは無い。

 居場所も無いって思ってた。

 私はきっと、神様に嫌われているのだと思ってた。

 だけど、神様は私のことを見捨ててはいなかったのかもしれない。

 私は人生で初めて、居場所を見つけられた気がした。




 相嶋さんとの出逢いは、


 私の人生を大きく変えてくれたのだった――。
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