行き場を失くした私を拾ってくれたのは、強くて優しい若頭の彼でした
「兄貴、病院には行かなくて平気ですか?」
「問題無い。腹の傷はこの前のが開いただけで、もう血は止まってる」
「それじゃあ、事務所に戻りますか?」
「いや、ひとまず家に行く。事務所には(コイツ)を置いてから向かう」
「分かりました」

 そして、病院には向かわず相嶋さんの自宅へ向かうことになり、私は終始緊張したまま車に揺られていた。

 車は走ること約三十分、敷地面積の広い家や高級車が停まる住宅が建ち並んでいる高級住宅街へ入っていく。

(凄いな……こんなところに家があるなんて……)

 私が住んでいたところなんて、築年数の古いアパートや借家が並んでいた場所だったこともあって、やっぱり恵まれた人間との格差は凄いんだと再確認していた。

「到着しました!」
「ご苦労。愛斗、お前はここで待機してろ。七星は俺と一緒に来い」

 辿り着いたのは他と同じように敷地面積の広い大きく立派な一軒家の前。

「ここが、相嶋さんのご自宅ですか?」
「ああ、そうだ」

 車を降りて、渡利さんに案内されるまま、私は木々や花が手入れされている庭を歩いて玄関前へやって来る。

 そして、何故か相嶋さんではなく渡利さんが鍵を開けて家の中へ入って行くと、

「兄貴、お帰りなさい!」
「お疲れ様です! 兄貴」

 姿勢を正して頭を下げた二人の男の人たちに『お帰りなさい』『お疲れ様です』と出迎えられた。
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