迷惑ですから追いかけてこないでください!
次の日の朝、リッチマス卿が宿屋にやって来ました。
リッチマス卿とは何度か社交場で顔を合わせたことがあるから、お互いに顔見知りではあるけれど、会釈をするくらいで挨拶以外に会話をしたことはありまけん。
私の家は変わり者だと言われているから、関わり合いになりたくなかったんでしょうね。
私だって、自分がリッチマス卿の立場なら私にわざわざ話しかけたりしないでしょうし、気持ちはわかります。
中年のリッチマス卿は中肉中背の紳士で、鼻の下に立派な髭を生やしています。
その髭が気になるのか、ラシルくんは私の足にしがみついて、彼を無言で見つめていました。
「ほほう」
顎に手を当てて、リッチマス卿はラシルくんに微笑みかける。
「これはまた、そういうことですか。可愛らしい坊ちゃんだ」
「……あの、ラシルくんに何か?」
「ラシルくんと言うのですね」
「そうですが」
私が警戒しているからか、ラシルくんは怖がって私の後ろに隠れてしまいました。
すると、リッチマス卿が笑出だします。
「怖がらなくても大丈夫だよ。私は何もしないから」
「……あの、キール様からシルバートレイを受け取るように言われているのですが」
「そうだったね」
リッチマス卿は後ろに控えていた男性から、銀色のトレイを受け取り、私に手渡しました。
商品が飲み物や軽食を運ぶ時に使われるトレイで、長方形の形をしています。
受け取ってみると、思っていた以上に重いです。
「たとえ、身を守るためであっても暴力は良くないと思う方は持っていませんが、自分の身は自分で守るという方には人気の商品です」
そう言って、シルバートレイの取扱説明書も渡してくれました。
シルバートレイに説明書があるだなんて思ってもいませんでした。
「絶対に部屋から出ないようにしてください」
「……わかりました」
誰を信じたら良いのかわかりません。でも、キール様が派遣してくれた方ですから、リッチマス卿が敵ではない可能性が高いです。
昨日のキール様の様子や今のリッチマス卿の様子からして、皆が捜している王子はラシルくんなのでしょうね。
あとで、部屋に戻ったら足の裏を確認してみましょう。
ああ!
最悪なことになってしまいました!
でも、ラシルくんは悪くありません!
とにかく、今はキール様を信じるしかありません。
「キール様には、あなたを信用して部屋で大人しくしているとお伝えください」
私の答えに満足したのか、リッチマス卿は頷くと、話は終えたとばかりに部屋から出ていったのでした。
リッチマス卿とは何度か社交場で顔を合わせたことがあるから、お互いに顔見知りではあるけれど、会釈をするくらいで挨拶以外に会話をしたことはありまけん。
私の家は変わり者だと言われているから、関わり合いになりたくなかったんでしょうね。
私だって、自分がリッチマス卿の立場なら私にわざわざ話しかけたりしないでしょうし、気持ちはわかります。
中年のリッチマス卿は中肉中背の紳士で、鼻の下に立派な髭を生やしています。
その髭が気になるのか、ラシルくんは私の足にしがみついて、彼を無言で見つめていました。
「ほほう」
顎に手を当てて、リッチマス卿はラシルくんに微笑みかける。
「これはまた、そういうことですか。可愛らしい坊ちゃんだ」
「……あの、ラシルくんに何か?」
「ラシルくんと言うのですね」
「そうですが」
私が警戒しているからか、ラシルくんは怖がって私の後ろに隠れてしまいました。
すると、リッチマス卿が笑出だします。
「怖がらなくても大丈夫だよ。私は何もしないから」
「……あの、キール様からシルバートレイを受け取るように言われているのですが」
「そうだったね」
リッチマス卿は後ろに控えていた男性から、銀色のトレイを受け取り、私に手渡しました。
商品が飲み物や軽食を運ぶ時に使われるトレイで、長方形の形をしています。
受け取ってみると、思っていた以上に重いです。
「たとえ、身を守るためであっても暴力は良くないと思う方は持っていませんが、自分の身は自分で守るという方には人気の商品です」
そう言って、シルバートレイの取扱説明書も渡してくれました。
シルバートレイに説明書があるだなんて思ってもいませんでした。
「絶対に部屋から出ないようにしてください」
「……わかりました」
誰を信じたら良いのかわかりません。でも、キール様が派遣してくれた方ですから、リッチマス卿が敵ではない可能性が高いです。
昨日のキール様の様子や今のリッチマス卿の様子からして、皆が捜している王子はラシルくんなのでしょうね。
あとで、部屋に戻ったら足の裏を確認してみましょう。
ああ!
最悪なことになってしまいました!
でも、ラシルくんは悪くありません!
とにかく、今はキール様を信じるしかありません。
「キール様には、あなたを信用して部屋で大人しくしているとお伝えください」
私の答えに満足したのか、リッチマス卿は頷くと、話は終えたとばかりに部屋から出ていったのでした。