迷惑ですから追いかけてこないでください！
　朝食は宿屋の二階にあるレストランのバイキングの料理を適当に見繕って部屋に持ってきてもらいました。
　
　カーコさんは雑食らしく、私たちの料理を少しずつあげると嬉しそうに食べています。
　ラシルくんと一緒にカーコさんの姿に和んでいると、宿屋の人が部屋に訪ねてきました。

「どうかしましたか？」
　
　困った顔をされているので気になって聞いてみると、怒鳴り声が聞こえてきました。

「ここにミリアーナが泊まっていると聞いたんだ！　彼女に会わせろ！」

　この声は何度も聞いた声です。

　騒いでいるのは、どうやらポッコエ様のようですね。

「私に会いたいと言っていますね」
「どうされますか？　お会いになりますか？」
「様子だけ見てみようと思います」

　付いていくと訴えたラシルくんとカーコさんと一緒にニ階からフロントを覗いてみると、宿屋の従業員がポッコエ様の相手をしていました。

「申し訳ございません、ポッコエ様。お客様の個人情報になりますので、泊まっているかいないかどうかをお答えすることはできません」
「何を言ってるんだ！　ここの宿屋は俺の父が経営してるんだぞ！」

　偉そうに言っていますけど、偉いのはお父様ですよね。

「ど、どうして、あのひとはミリアーナさんにあおうとしているのですか？」
「……なんとなくですが理由はわかりますので、お部屋に戻ってから話をしますね」
「あれってキールの馬鹿兄じゃないノ。顔は良いのに性格が悪いし馬鹿だから残念ネ」

　カーコさんが手すりに止まって呟くように言いました。

　ふと、キール様からの手紙の中に知らない人に会うなという文章が書かれていたのを思い出しました。

　この人は知っている相手ですけど、会わないほうが良いですよね。



　
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