迷惑ですから追いかけてこないでください!

第三章

「どうして、キール様はラシルくんを助けようとするのです? それは、とある方の希望だからですか?」
「そうです」
「相手が誰だと言えないということはわかりました。では、ラシルくんを助ける理由を教えてもらうことはできますでしょうか」
「……申し訳ないです。それも話せません。話してしまうと、あなたの命を奪わなくてはならない日が来るかもしれませんから」

 そんな物騒な話なんですか!?

 いや、相手は王家、もしくは高位貴族でしょうから、秘密厳守だということはわかりますとも。

 でも、関わってしまった以上、もう後戻りもできないんですよね。

「……今の段階では殺されないということでよろしいでしょうか」
「それは間違いありません。ラシルくんはあなたに懐いているようですし、彼が悲しむことはしたくありませんし、僕もあなたを殺したくはありません」
「こ、ころす? あなたはミリアーナさんをころそうとしているんですか!」

 興奮したラシルくんが椅子から下りようとするので、慌てて体を押さえます。

「ラシルくん、まだ食事中ですよ。動き回ってはいけません」
「で、でも、こわいことをいっていましたよ! あんなことをきいてだまっていられないです! ミリアーナさんはぼくがまもります!」
「ありがとうございます。気持ちはとても嬉しいです。私が悪いことを考えなければ殺されたりしませんから安心してください」
 
 知っている人間が多いほど、それは秘密ではなくなってしまいます。だから、秘密を知った人間を亡きものにするという考え方は時には必要なことなのでしょう。

 私はまだ殺されたくありませんから、余計なことは知らないほうが良いです。

 ただ、キール様が私たちを逃がそうとしているということは、王族、もしくは関係者に命を狙われている可能性が高いですね。
 
 キール様は悪い人であれば、足の裏の焼印が見れないことを知っていると言っていましたから、試しても意味がありません
 どうやって判断したら良いのかしら。

「ミリアーナさん、と、とにかく、キールさんにあしのうらをみてもらいましょう」

 ラシルくんもキール様を敵か味方か判断しかねているようで、自分から提案してくれた。
 
 意味がないような気もするけれど、はっきり指で示してもらえば良いかしら。

 私は気乗りはしませんでしたが、ラシルくんはもう決めたと言わんばかりの顔をしていますので、とにかく試してみることに決めたのでした。
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