迷惑ですから追いかけてこないでください!
 それとも、お姉様だけ森に放り出そうかしら。
 ポッコエ様のことは、一応彼もキール様の親族だから狼が覚えている可能性はあるけれど、お姉様のことは敵とみなすでしょう。
 問題は私とお姉様の匂いが似ていた場合ですね。姉妹ですから体の匂いが似ていてもおかしくありません。
 外見が似ていなかったらまだしも、似ているから狼たちは余計に困惑しそうな気がします。

 私が黙り込んだからか、カーコさんが私に話しかけてきます。

「やっぱり、気になるからあたしも残るワ。今からキールに報告しに行っても遅いしネ。とにかく、しつこいようなら叩きのめしましょうカ。あたしも手伝うワ」
「カーコさんは戦えるんですか?」
「まあ、見てなさいヨ。あたしは普通のカラスじゃないからネ」

 カーコさんは羽を自分の胸に当てて言いました。

 正確には見た目がカラスの使い魔なんでしょうけれど、そこはツッコまないでおくことにします。

「ポッコエ様たちが何をしに来たのか確認しましょう。私やラシルくんを探して来たというのであれば戦わなければなりません」
「あんな馬鹿が見つけられるんだモノ。他の人も気付いている可能性が高いわネ。そちらのほうが心配だワ」
「ということは、ここにはもういられないということですね」

 せっかく住み慣れてきたのにと、気が重くなりましたが、ラシルくんの安全が大事ですもの。
 ラシルくんもきっと、理解してくれるはずです。

 そう思って、窓の外をもう一度見ると、お姉様とポッコエ様が門兵と話をしている姿が見えました。

 あまり長く部屋に戻らないとラシルくんが心配するでしょうから、声をかけたあとに行くことにしました。
 簡単に事情を説明すると、ラシルくんは不安そうな顔で聞いてきます。

「ぼ、ぼくはいかないほうがよいですよね」
「そうですね。私たちを信じて待っていてくれますか?」
「……わかりました」

 しょんぼりしてしまったラシルくんをメイドに任せて、私とカーコさんは門兵と揉めている二人の所に向かいました。

 2人は私の顔を見ると、鉄の門越しに話しかけてきます。

「やっぱりここにいたのね! ミリアーナ! どうして連絡をくれなかったの!?」
「お久しぶりですね、お姉様。私も色々と忙しかったんです。それより、どうしてここがわかったんですか?」
「色々と聞き込みをして調べたのよ。ミリアーナ、私たち、今日からここに住むから!」
「はい?」

 また、わけのわからないことを言ってきましたね。

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