迷惑ですから追いかけてこないでください!
「キ、キール! どうして、お前がここにいるんだよ!? 遠征中だったんじゃないのか!?」
ポッコエ様は話しかけてきた相手がキール様だとわかった瞬間、慌てた顔で言いました。
キール様がしばらく屋敷に戻らないから、今のうちだと思ったのかしら。
本当に何を考えているのかわからない人ですね。
「どうしてここにいるのかというのは、こちらも兄さんに聞きたいですよ。遠征の話は誰に聞いたかわかりませんが、父上と母上が長い間、家を空けている以上、僕が遠征に行くわけにはいかないんですよ」
「べ、別に俺がいるんだから良いだろう!」
「では、今ここで何をしているんですか? 俺がいると言うんなら屋敷内にいないといけないのではないですか」
「……そ、それはだな」
ポッコエ様が目を泳がせていると、お姉様が馬から下りたキール様に話しかけます。
「わたしとポッコエ様はここに住むことに決めたんです」
「……それは、僕の父が承諾しているのですか」
「そ、それは、許可をもらっているはずです! ねぇ、ポッコエ様?」
「……いや、それがだな、まあ、なんだ。ほら、あれだ。うん」
ポッコエ様が奥歯に物が挟まったような答えを返すと、お姉様は呆れた顔で尋ねます。
「ま、まさか、許可をもらっていないんですか?」
「……悪い。言ってみたら駄目だと言われたんだ」
「どうしてですか!? この別荘は、いずれポッコエ様のものになるんですよね?」
「そのはずなんだが駄目だと言われたんだよ!」
それはそうですよね。
あなたに後を継がせるつもりはないのですから。
キール様を見ると、門兵と話をしていました。
自分だけ中に入れてもらおうとしているみたいです。
視線をお姉様たちに戻そうとすると、カーコさんが話しかけてきました。
「すっかり忘れていたワ。あのお馬鹿さんには追跡魔法がかけられているのヨ」
「追跡魔法?」
「エエ。あの馬鹿を放っておくと何をするかわからないでショ。だから、当主がかけているはずヨ。でも、いちいち確認しないといけないのヨ。今、当主は特に忙しいから気付くのが遅れたのかもしれないわネ」
「そうですよね。ずっと、公爵閣下が息子を監視しているわけにもいかないですものね。キール様も仕事がありますし」
わざわざ、人を付けるほどでもないと思っていたんでしょうね。
ポッコエ様自体は小心者だから、今日だって、お姉様に誘われて一緒に来たに違いありません。
ポッコエ様は気が強い人がお好きですものね。
格好良いところを見せたかったのかもしれないけれど、無理をするから怒られることになるのです。
「ねえ、ミリアーナ! 私はあなたの姉なんだから、別荘の中に入ることはできるでしょう? ここまで来るのに本当に時間がかかったのよ! 少し休ませてくれるだけでもいいわ! 中に入れてちょうだい!」
「中に入れてもかまいませんが、この餌食になるだけですけど、それでもよろしいでしょうか?」
ティアトレイを見せると、お姉様の顔がひきつります。
「そ、それは暴漢対策でしょう! 私に使うものじゃないわ!」
「妹が相手とはいえ、お姉様は強奪者じゃないですか。悪い人であることに変わりはありません」
「そこまで悪いことはしてないわよ! 皆やってるもの!」
「一括りにするのはどうかと思います。というか、姉のものは姉のもの、妹のものは姉のものみたいなことを言う人って、お姉様からしか聞いたことがないのですが」
「そうヨ! あんた、普通じゃないわヨ!」
カーコさんが羽をばたつかせながら言うと、お姉様が門の隙間から手を伸ばす。
「何よ、この鳥! 生意気な鳥ね! ミリアーナの鳥なの!? 焼き鳥にしてやるわ!」
「違います」
「僕の鳥です」
私とキール様が同じタイミングで言葉を発しました。
「アタシはキールの鳥ヨ。ミリアーナとはお友達ナノ。でも、普通のカラスじゃないからネ」
そう言って、カーコさんは地面から飛びだったかと思うと、お姉様のシニヨンにしている髪を足の爪で攻撃したのです。
「きゃああっ! 何するのよ!? 髪が乱れるじゃないの! メイドはここまで連れてきていないのよ! 痛い! ちょっと! 手をつつくのはやめてよ!」
カーコさんから逃げ惑うお姉様を見て思います。
せっかく、ティアトレイを持ってきたのに、このままだと出番はなさそうですね。
ポッコエ様は話しかけてきた相手がキール様だとわかった瞬間、慌てた顔で言いました。
キール様がしばらく屋敷に戻らないから、今のうちだと思ったのかしら。
本当に何を考えているのかわからない人ですね。
「どうしてここにいるのかというのは、こちらも兄さんに聞きたいですよ。遠征の話は誰に聞いたかわかりませんが、父上と母上が長い間、家を空けている以上、僕が遠征に行くわけにはいかないんですよ」
「べ、別に俺がいるんだから良いだろう!」
「では、今ここで何をしているんですか? 俺がいると言うんなら屋敷内にいないといけないのではないですか」
「……そ、それはだな」
ポッコエ様が目を泳がせていると、お姉様が馬から下りたキール様に話しかけます。
「わたしとポッコエ様はここに住むことに決めたんです」
「……それは、僕の父が承諾しているのですか」
「そ、それは、許可をもらっているはずです! ねぇ、ポッコエ様?」
「……いや、それがだな、まあ、なんだ。ほら、あれだ。うん」
ポッコエ様が奥歯に物が挟まったような答えを返すと、お姉様は呆れた顔で尋ねます。
「ま、まさか、許可をもらっていないんですか?」
「……悪い。言ってみたら駄目だと言われたんだ」
「どうしてですか!? この別荘は、いずれポッコエ様のものになるんですよね?」
「そのはずなんだが駄目だと言われたんだよ!」
それはそうですよね。
あなたに後を継がせるつもりはないのですから。
キール様を見ると、門兵と話をしていました。
自分だけ中に入れてもらおうとしているみたいです。
視線をお姉様たちに戻そうとすると、カーコさんが話しかけてきました。
「すっかり忘れていたワ。あのお馬鹿さんには追跡魔法がかけられているのヨ」
「追跡魔法?」
「エエ。あの馬鹿を放っておくと何をするかわからないでショ。だから、当主がかけているはずヨ。でも、いちいち確認しないといけないのヨ。今、当主は特に忙しいから気付くのが遅れたのかもしれないわネ」
「そうですよね。ずっと、公爵閣下が息子を監視しているわけにもいかないですものね。キール様も仕事がありますし」
わざわざ、人を付けるほどでもないと思っていたんでしょうね。
ポッコエ様自体は小心者だから、今日だって、お姉様に誘われて一緒に来たに違いありません。
ポッコエ様は気が強い人がお好きですものね。
格好良いところを見せたかったのかもしれないけれど、無理をするから怒られることになるのです。
「ねえ、ミリアーナ! 私はあなたの姉なんだから、別荘の中に入ることはできるでしょう? ここまで来るのに本当に時間がかかったのよ! 少し休ませてくれるだけでもいいわ! 中に入れてちょうだい!」
「中に入れてもかまいませんが、この餌食になるだけですけど、それでもよろしいでしょうか?」
ティアトレイを見せると、お姉様の顔がひきつります。
「そ、それは暴漢対策でしょう! 私に使うものじゃないわ!」
「妹が相手とはいえ、お姉様は強奪者じゃないですか。悪い人であることに変わりはありません」
「そこまで悪いことはしてないわよ! 皆やってるもの!」
「一括りにするのはどうかと思います。というか、姉のものは姉のもの、妹のものは姉のものみたいなことを言う人って、お姉様からしか聞いたことがないのですが」
「そうヨ! あんた、普通じゃないわヨ!」
カーコさんが羽をばたつかせながら言うと、お姉様が門の隙間から手を伸ばす。
「何よ、この鳥! 生意気な鳥ね! ミリアーナの鳥なの!? 焼き鳥にしてやるわ!」
「違います」
「僕の鳥です」
私とキール様が同じタイミングで言葉を発しました。
「アタシはキールの鳥ヨ。ミリアーナとはお友達ナノ。でも、普通のカラスじゃないからネ」
そう言って、カーコさんは地面から飛びだったかと思うと、お姉様のシニヨンにしている髪を足の爪で攻撃したのです。
「きゃああっ! 何するのよ!? 髪が乱れるじゃないの! メイドはここまで連れてきていないのよ! 痛い! ちょっと! 手をつつくのはやめてよ!」
カーコさんから逃げ惑うお姉様を見て思います。
せっかく、ティアトレイを持ってきたのに、このままだと出番はなさそうですね。