迷惑ですから追いかけてこないでください!
第四章
「なんてことをするんだ!」
ポッコエ様は焦った顔で叫ぶと、すぐに駆け寄ってお姉様を抱き起こしました。
「ジョセアンナ! しっかりしろ! 大丈夫か!?」
「……大丈夫ではありません!」
お姉様はポッコエ様の腕の中で恨めしそうに私を見つめます。
「実の姉にする仕打ちじゃないわ! 子供と一緒にいるとポッコエ様から聞いたけど、王子じゃないんでしょう!? それなのに、どうして一緒にいるのよ! いる場所がないんなら、実家に帰ってきたらいいじゃない!」
「私は両親から追い出された身なんです。大体、いつかは出ていくつもりをしていましたから、実家に戻る気はありません」
「どうしてよ!? 戻りにくいみたいだから、せっかくわたしが迎えに来てあげたのに!」
「お姉様、さっきまではこの別荘に住むと言っておられましたよね。もう、お忘れですか?」
「あ、あなたがいる所にいようと思っただけよ!」
お姉様の執着にはうんざりします。
私が言うのもなんですが、私しかお姉様を相手にしてくれる人がいないのでしょう。
両親はお兄様ばかり可愛がっていますし、お姉様がどうなっても特に興味がないのだと思います。
それはそれで、お姉様が可哀想だと思いますし、酷い親だとも思います。
両親のこともいつかは、このティアトレイで一発お見舞いしたいものです。
そんなことを考えつつ、今は、お姉様との関係を断ち切ることを優先します。
「お姉様、もう、いい加減にしてください!」
私が声を荒らげると、お姉様はびくりと体を震わせました。
「あなたは私でストレス発散をしているだけです! 家にいる間は我慢できていましたが、もう限界です! 迷惑ですから追いかけてこないでください!」
「め、迷惑って、実の姉になんてことを言うんだ!?」
驚きで何も言えなくなっている、お姉様の代わりにポッコエ様が叫んできました。
「本当のことです。私は今、お姉様から解放されて幸せなんです!」
色々と問題はありますが、お姉様といるよりかはよっぽどいいんです!
お姉様の近くにいても命の危険はありません。でも、ストレスがたまるばかりですもの!
我に返ったお姉様が訴えます。
「妹が姉の言うことを聞くのは普通のことでしょう!?」
「普通のことではありません! 何でもかんでも聞くのはおかしいです!」
「だって、皆はそうしていると言っていたわ!」
自分の意見が正しいと思い込んでいるお姉様に答えます。
「性格の悪い人には性格の悪い人が集まるのかもしれません。それに、盛り上がる話題として大げさに言っていた可能性もありますよ」
「そ、そんな! 私は騙されていたって言うの!? みんな、親切に教えてくれているのだと思っていたのに!」
頬を押さえて嘆くお姉様に憐れみの目を向けます。
「私の言うことに聞く耳を持ってくれていれば、もっと早くに気付けたと思います。というか、お姉様自身もおかしいと思うべきです」
「そんなの無理よ! だって本当にそう思っていたんだから!」
「では、改心して、もう二度と私を追いかけて来ないでください」
「……ミリアーナ」
私の名を呼んだのは、ポッコエ様でした。
「……何でしょうか」
「先日の時から思っていたんだが、お前は本当はそんな性格だったのか?」
「……そうですが」
そういえば、昔はポッコエ様の前では猫を被っていましたね!
ポッコエ様はお姉様を投げ捨てると、立ち上がって叫びます。
「そうか、なら、結婚しよう!」
「「「「は?」」」」
門兵とポッコエ様以外の全員が聞き返した。
驚きで次の言葉が発せない私の代わりに、キール様が話しかける。
「に、兄さん、あなたは何を考えているんですか! ミリアーナさんとの婚約を破棄したのはあなたでしょう!」
「こんなに荒々しい性格だなんて知らなかったんだ! 俺はオドオドしてる女が嫌いだから婚約を破棄したんだよ! ミリアーナの性格がこうだと知っていたら、俺は婚約破棄なんてしていない! ミリアーナ! 再婚約するぞ!」
「嫌です」
間髪入れずに冷たく言い放つと、私はティアトレイをポッコエ様の額に叩きつけたのでした。
ポッコエ様は焦った顔で叫ぶと、すぐに駆け寄ってお姉様を抱き起こしました。
「ジョセアンナ! しっかりしろ! 大丈夫か!?」
「……大丈夫ではありません!」
お姉様はポッコエ様の腕の中で恨めしそうに私を見つめます。
「実の姉にする仕打ちじゃないわ! 子供と一緒にいるとポッコエ様から聞いたけど、王子じゃないんでしょう!? それなのに、どうして一緒にいるのよ! いる場所がないんなら、実家に帰ってきたらいいじゃない!」
「私は両親から追い出された身なんです。大体、いつかは出ていくつもりをしていましたから、実家に戻る気はありません」
「どうしてよ!? 戻りにくいみたいだから、せっかくわたしが迎えに来てあげたのに!」
「お姉様、さっきまではこの別荘に住むと言っておられましたよね。もう、お忘れですか?」
「あ、あなたがいる所にいようと思っただけよ!」
お姉様の執着にはうんざりします。
私が言うのもなんですが、私しかお姉様を相手にしてくれる人がいないのでしょう。
両親はお兄様ばかり可愛がっていますし、お姉様がどうなっても特に興味がないのだと思います。
それはそれで、お姉様が可哀想だと思いますし、酷い親だとも思います。
両親のこともいつかは、このティアトレイで一発お見舞いしたいものです。
そんなことを考えつつ、今は、お姉様との関係を断ち切ることを優先します。
「お姉様、もう、いい加減にしてください!」
私が声を荒らげると、お姉様はびくりと体を震わせました。
「あなたは私でストレス発散をしているだけです! 家にいる間は我慢できていましたが、もう限界です! 迷惑ですから追いかけてこないでください!」
「め、迷惑って、実の姉になんてことを言うんだ!?」
驚きで何も言えなくなっている、お姉様の代わりにポッコエ様が叫んできました。
「本当のことです。私は今、お姉様から解放されて幸せなんです!」
色々と問題はありますが、お姉様といるよりかはよっぽどいいんです!
お姉様の近くにいても命の危険はありません。でも、ストレスがたまるばかりですもの!
我に返ったお姉様が訴えます。
「妹が姉の言うことを聞くのは普通のことでしょう!?」
「普通のことではありません! 何でもかんでも聞くのはおかしいです!」
「だって、皆はそうしていると言っていたわ!」
自分の意見が正しいと思い込んでいるお姉様に答えます。
「性格の悪い人には性格の悪い人が集まるのかもしれません。それに、盛り上がる話題として大げさに言っていた可能性もありますよ」
「そ、そんな! 私は騙されていたって言うの!? みんな、親切に教えてくれているのだと思っていたのに!」
頬を押さえて嘆くお姉様に憐れみの目を向けます。
「私の言うことに聞く耳を持ってくれていれば、もっと早くに気付けたと思います。というか、お姉様自身もおかしいと思うべきです」
「そんなの無理よ! だって本当にそう思っていたんだから!」
「では、改心して、もう二度と私を追いかけて来ないでください」
「……ミリアーナ」
私の名を呼んだのは、ポッコエ様でした。
「……何でしょうか」
「先日の時から思っていたんだが、お前は本当はそんな性格だったのか?」
「……そうですが」
そういえば、昔はポッコエ様の前では猫を被っていましたね!
ポッコエ様はお姉様を投げ捨てると、立ち上がって叫びます。
「そうか、なら、結婚しよう!」
「「「「は?」」」」
門兵とポッコエ様以外の全員が聞き返した。
驚きで次の言葉が発せない私の代わりに、キール様が話しかける。
「に、兄さん、あなたは何を考えているんですか! ミリアーナさんとの婚約を破棄したのはあなたでしょう!」
「こんなに荒々しい性格だなんて知らなかったんだ! 俺はオドオドしてる女が嫌いだから婚約を破棄したんだよ! ミリアーナの性格がこうだと知っていたら、俺は婚約破棄なんてしていない! ミリアーナ! 再婚約するぞ!」
「嫌です」
間髪入れずに冷たく言い放つと、私はティアトレイをポッコエ様の額に叩きつけたのでした。