迷惑ですから追いかけてこないでください!
 ワルーニャ様の執念を感じると考えていると、カーコさんが言います。

「たぶん、襲ってくるのは夜ヨ。返り討ちにしてやりまショウ! キールも来ると言っていたし、誕生日パーティーはしても良いと思うわヨ」
「ありがとうございます」

 ラシルくんにはパーティーのあとに、逃げなければいけなくなるかもしれないという話をしておくことにしました。

 屋敷の敷地内に不法侵入した時点で捕まえる予定だけど、カーコさんも言っていたように万が一のことがあるからです。

 キール様がいてくれるなら大丈夫ですよね。
 だって、王家直属の騎士団に入団しているんですもの。
 
 それに、ラシルくんを襲おうとするなら、私がティアトレイで相手になってやります!


 
*****


 ラシルくんに知らせはしたものの、特に動揺した様子はありませんでした。
 追われていることは知っていたので、覚悟はできていると落ち着いた様子で答えたのです。

 本当にすごいと思います。
 私が5歳の時は、こんなにしっかりしていませんでした!

 5歳の時の記憶なんてほとんどないけれど、絶対にこんな風に落ち着いていなかったことだけはわかります。

「ミリアーナさんは危険ですので、ラシル様と一緒にいてください」

 夕食を終えたあと、ティアトレイを持って臨戦態勢の私でしたが、キール様からはお許しが出ませんでした。

「私だって戦う準備はできています!」
「相手は暗殺のプロです。危険ですから絶対に駄目です」

 厳しい口調で言われ、駄々をこねるわけにもいかなくて諦めることにしました。

 足手まといになるのは嫌ですものね。

「ラシル様と安全な場所で待っていてください」

 困ったような笑みを浮かべて懇願された私は、こんな時なのに心臓の鼓動が速くなってしまいました。

 これは、ラシルくんが意識させるようなことを言うからです!

 ラシルくんのお友達からは「ミリアーナおねえちゃんはイケメンにやさしくされたらすぐにオちそう」だなんて言われていたす。

 今まさにそうだから気をつけなければなりません!

 その後はラシルくんと、いつでも逃げられるように地下室付近で待っていると、急に外が騒がしくなりました。

 しばらくして、賊は全て捕縛したと連絡があったのです。

「ミリアーナさん、だいじょうぶですよ」

 安堵してラシルくんを抱きしめると、ラシルくんはそう言って私を守ろうとするように抱きしめ返してくれたのでした。



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