迷惑ですから追いかけてこないでください!
その日の夜、パーティーに出かける準備をしていると、ポッコエ様が屋敷にやって来ました。
迎えに来ていただける約束をしていたので、私は彼をエントランスホールで出迎えました。
紺色のタキシード姿のポッコエ様は、彼の瞳の色に合わせたレモン色のドレスを着た私を見て口を開きます。
「今日も相変わらずの間抜け面だな」
はい!
ありがとうございます!
あなたから言われるのは褒め言葉です!
間抜けな顔をしていて嬉しいです!
心の中では笑顔で、でも、ポッコエ様には悲しげな表情を見せてから俯きます。
「……申し訳ございません。生まれつき、この顔なのです。どうしようもできません」
「ジョセアンナとは全く違うな」
お姉様とはたまに双子と間違われるくらいに似ていると言われるのに何が違うのかしら。
もしかして、ポッコエ様は目が悪いとかですかね?
でも、それならお姉様のことも間抜け面に見えますわよね。
私のような変わった考えの持ち主には、性格の悪い人の考えることなんて理解できないのかもしれません。
長身痩躯であろうが顔が整っていようが性格の悪いポッコエ様に言われても、あなたの嫌いな顔で嬉しいです!
と言いたくなるのを何とかこらえます。
「おい。聞いているのか」
「聞いておりますとも。ポッコエ様に間抜け面と言われてショックを受けていたんです」
あなたのへっぽこぶりを見ていると、ポッコエ様ではなく、ポッコへ様と呼んでしまいそうです。
でも、そういうところが素敵ですよ!
ぜひ、婚約破棄してくださいませ。
お金をもらっている以上、私から婚約の解消をすることは無理なんです。
心の声を口に出さないように、必死に口を閉ざしていると、ポッコエ様は私を見下ろして鼻で笑います。
「そんなことを言っても優しくなんてしないぞ」
「で、では、私はどうすれば良いのでしょうか」
「俺の命令通りに動けば良いんだ」
婚約破棄でしたら喜んで受けますわよ!
「おい! 聞いているのか!」
「申し訳ございません! 何でしたでしょうか」
嫌われる準備はできてますわよ!
さあ、さあ!
パーティーなんて本当は行きたくないんです!
ポッコエ様が口を開こうとした時、邪魔が入りました。
「まあ! ポッコエ様! 迎えに来てくださったのですか?」
笑顔でエントランスホールに現れたお姉様を見たポッコエ様は、にやりと嫌な笑みを浮かべる。
「ジョセアンナか。ちょうど良かった。今からミリアーナに話をするところだったんだ」
「どんな話なのでしょう?」
お姉様は目を輝かせてポッコエ様に尋ねた。
「お前には前々から話をしていたことだ。ちょっとイレギュラーなことが起きたが、何とかなるだろう」
「イレギュラー? よくわからないですけど楽しみですわ!」
楽しみなのは私も同じですわよ、お姉様!
不安そうにしているふりをして二人を見つめていると、ポッコエ様は私に目を向ける。
「ミリアーナ」
「何でしょうか」
「今日のパーティーは弟が主催であって、両親はいない」
「……はあ」
「だからこそ決めてしまおうと思う。非常事態だからな」
あなたの脳内が非常事態なのは通常運転だと思っていましたが違うのですね。
ポッコエ様は切れ長の目を細めて続ける。
「お前との婚約を破棄し、お前を愛人の子供の世話係にする」
「「はい?」」
聞き返したのは私だけでなく、お姉様もだった。
迎えに来ていただける約束をしていたので、私は彼をエントランスホールで出迎えました。
紺色のタキシード姿のポッコエ様は、彼の瞳の色に合わせたレモン色のドレスを着た私を見て口を開きます。
「今日も相変わらずの間抜け面だな」
はい!
ありがとうございます!
あなたから言われるのは褒め言葉です!
間抜けな顔をしていて嬉しいです!
心の中では笑顔で、でも、ポッコエ様には悲しげな表情を見せてから俯きます。
「……申し訳ございません。生まれつき、この顔なのです。どうしようもできません」
「ジョセアンナとは全く違うな」
お姉様とはたまに双子と間違われるくらいに似ていると言われるのに何が違うのかしら。
もしかして、ポッコエ様は目が悪いとかですかね?
でも、それならお姉様のことも間抜け面に見えますわよね。
私のような変わった考えの持ち主には、性格の悪い人の考えることなんて理解できないのかもしれません。
長身痩躯であろうが顔が整っていようが性格の悪いポッコエ様に言われても、あなたの嫌いな顔で嬉しいです!
と言いたくなるのを何とかこらえます。
「おい。聞いているのか」
「聞いておりますとも。ポッコエ様に間抜け面と言われてショックを受けていたんです」
あなたのへっぽこぶりを見ていると、ポッコエ様ではなく、ポッコへ様と呼んでしまいそうです。
でも、そういうところが素敵ですよ!
ぜひ、婚約破棄してくださいませ。
お金をもらっている以上、私から婚約の解消をすることは無理なんです。
心の声を口に出さないように、必死に口を閉ざしていると、ポッコエ様は私を見下ろして鼻で笑います。
「そんなことを言っても優しくなんてしないぞ」
「で、では、私はどうすれば良いのでしょうか」
「俺の命令通りに動けば良いんだ」
婚約破棄でしたら喜んで受けますわよ!
「おい! 聞いているのか!」
「申し訳ございません! 何でしたでしょうか」
嫌われる準備はできてますわよ!
さあ、さあ!
パーティーなんて本当は行きたくないんです!
ポッコエ様が口を開こうとした時、邪魔が入りました。
「まあ! ポッコエ様! 迎えに来てくださったのですか?」
笑顔でエントランスホールに現れたお姉様を見たポッコエ様は、にやりと嫌な笑みを浮かべる。
「ジョセアンナか。ちょうど良かった。今からミリアーナに話をするところだったんだ」
「どんな話なのでしょう?」
お姉様は目を輝かせてポッコエ様に尋ねた。
「お前には前々から話をしていたことだ。ちょっとイレギュラーなことが起きたが、何とかなるだろう」
「イレギュラー? よくわからないですけど楽しみですわ!」
楽しみなのは私も同じですわよ、お姉様!
不安そうにしているふりをして二人を見つめていると、ポッコエ様は私に目を向ける。
「ミリアーナ」
「何でしょうか」
「今日のパーティーは弟が主催であって、両親はいない」
「……はあ」
「だからこそ決めてしまおうと思う。非常事態だからな」
あなたの脳内が非常事態なのは通常運転だと思っていましたが違うのですね。
ポッコエ様は切れ長の目を細めて続ける。
「お前との婚約を破棄し、お前を愛人の子供の世話係にする」
「「はい?」」
聞き返したのは私だけでなく、お姉様もだった。