Bravissima!ブラヴィッシマ
「という訳で……」
「どういう訳ですか?」
如月シンフォニーホールの練習室で話を切り出した公平に、芽衣は憮然とする。
「まあまあ、そう怒らないでよ。ね?芽衣ちゃん」
「そうおっしゃられても。如月さんは?これで本当にいいんですか?本番のその瞬間まで、何を弾くか分からないんですよ?」
そう。
プログラムは事前投票とはいえ、数日前には結果が知らされるはずだった。
だが理事長が、余りに話題になっているのに喜々として「当日はネットでコンサートをライブ配信。最後の曲は直前まで投票可能にする」と決めたのだ。
「そんなコンサート、聞いたことないですけど?」
一人抗議してみるが、聖は諦めているらしかった。
「まあ、これまでの動画から選ぶってことは、一応やったことある曲だから、なんとかなるんじゃね?いつも1発撮りだしさ。やること変わんないよ」
「じゃあコンサートの最後の最後、疲れ切ったところに、エルンスト弾くことになっても構わないんですね?無伴奏なので、私は黙って見てますからいいですけど」
うぐっと聖は妙な声を出す。
「そ、そうか。それは嫌だな。あ!じゃあ、1部でエルンストやっておこう。そしたら投票されないだろ?」
「分かりませんよ?もう一度聴きたーい!って更に投票数増えるかも」
「うげ!エルンスト2回?やめてくれー」
「でしょ?」
そして芽衣は公平に聞いてみた。
「ちなみに、今のところ人気なのはどの曲ですか?」
「ん?それがね、パガニーニにサラサーテ、ヴィエニャフスキ……。まあ要するに、超絶技巧だな」
ガックリと聖が肩を落とす。
「やっぱり俺『超絶技巧野郎』って呼ばれてるんだな」
「いいじゃないか。名誉なことだ」
「おい、否定しろよ!」
「ははは!そういう訳で今日の動画は、サン=サーンスのロンカプでーす」
鬼!と聖が睨みつけるが、公平は涼しい顔だ。
「おや?弾けないんですか?」
「弾けるわ!いくぞ、イスラメイ!」
「はい!イスラメイ、ロンカプいきます!」
やけくそなのか、芽衣までおかしくなってきた。
だがその後はいとも鮮やかに、二人はサン=サーンスの難曲《序奏とロンド・カプリチオーソ》を弾きこなす。
「ブラーヴィ!ってことで、この曲も人気投票の曲に入れておくな」
スタスタと去って行く公平に、聖も芽衣も「鬼!」と叫んだ。
「どういう訳ですか?」
如月シンフォニーホールの練習室で話を切り出した公平に、芽衣は憮然とする。
「まあまあ、そう怒らないでよ。ね?芽衣ちゃん」
「そうおっしゃられても。如月さんは?これで本当にいいんですか?本番のその瞬間まで、何を弾くか分からないんですよ?」
そう。
プログラムは事前投票とはいえ、数日前には結果が知らされるはずだった。
だが理事長が、余りに話題になっているのに喜々として「当日はネットでコンサートをライブ配信。最後の曲は直前まで投票可能にする」と決めたのだ。
「そんなコンサート、聞いたことないですけど?」
一人抗議してみるが、聖は諦めているらしかった。
「まあ、これまでの動画から選ぶってことは、一応やったことある曲だから、なんとかなるんじゃね?いつも1発撮りだしさ。やること変わんないよ」
「じゃあコンサートの最後の最後、疲れ切ったところに、エルンスト弾くことになっても構わないんですね?無伴奏なので、私は黙って見てますからいいですけど」
うぐっと聖は妙な声を出す。
「そ、そうか。それは嫌だな。あ!じゃあ、1部でエルンストやっておこう。そしたら投票されないだろ?」
「分かりませんよ?もう一度聴きたーい!って更に投票数増えるかも」
「うげ!エルンスト2回?やめてくれー」
「でしょ?」
そして芽衣は公平に聞いてみた。
「ちなみに、今のところ人気なのはどの曲ですか?」
「ん?それがね、パガニーニにサラサーテ、ヴィエニャフスキ……。まあ要するに、超絶技巧だな」
ガックリと聖が肩を落とす。
「やっぱり俺『超絶技巧野郎』って呼ばれてるんだな」
「いいじゃないか。名誉なことだ」
「おい、否定しろよ!」
「ははは!そういう訳で今日の動画は、サン=サーンスのロンカプでーす」
鬼!と聖が睨みつけるが、公平は涼しい顔だ。
「おや?弾けないんですか?」
「弾けるわ!いくぞ、イスラメイ!」
「はい!イスラメイ、ロンカプいきます!」
やけくそなのか、芽衣までおかしくなってきた。
だがその後はいとも鮮やかに、二人はサン=サーンスの難曲《序奏とロンド・カプリチオーソ》を弾きこなす。
「ブラーヴィ!ってことで、この曲も人気投票の曲に入れておくな」
スタスタと去って行く公平に、聖も芽衣も「鬼!」と叫んだ。