Bravissima!ブラヴィッシマ
「めーいー、久しぶり!元気?」
「うん、元気!弥生ちゃんも元気そうだね」
5月のゴールデンウィークに、芽衣は弥生とランチに出かけることになった。
どうやら弥生は、聖と芽衣のコンサートについて、色々聞きたいらしい。
料理をオーダーすると、早速身を乗り出してきた。
「なんかさ、盛り上がってるよねー。ずっとベールに包まれてた伴奏ピアニストの正体が判明!しかもドリームステージは感動ものだったし。で、いよいよその二人の演奏が生で聴ける!しかも最後の曲は、視聴者参加型の人気投票で決定!これはもう、ワクワクが止まりませんよ。私もねー、どの曲に投票しようか、迷いに迷ってるんだ」
弥生が話せば話すほど、芽衣の眉間にはしわが寄る。
「ん?なんかぶっさいくな顔してますけど、どうかしました?」
「どうかするよ!だって、ただでさえ緊張するのに、どの曲か分かんないんだよ?練習しないでいきなり弾くなんて。しかもなんだか、超絶技巧の曲が人気みたいだしさ」
「そりゃあね、なかなか聴けないもん、あんなラインナップ。あー、楽しみだな。いつだっけ?コンサート。予定空けておかなきゃ」
「……5月24日」
「5月24日ね。って、え?芽衣の誕生日じゃない!」
「うん、よりによってそうなの。あー、心臓に悪い誕生日になりそうだな」
芽衣はどんよりしながらため息をつく。
「なーに言ってんの、あんな素敵なホールでピアノ弾けるんだよ?最高の誕生日じゃない。ハッピーバースデートゥーミー!だよ」
あはは!と芽衣は思わず笑い出した。
「弥生ちゃんって、超ポジティブだよね」
「そうよ?私が芽衣だったら、そんな暗い顔しない。嬉しくて神様に感謝して、何がなんでもがんばろうって思う。芽衣、すごく恵まれてるんだよ?」
弥生ちゃん……、と芽衣は言葉を失う。
「分かってる。芽衣は努力と才能の人だから、そういうチャンスがちゃんと巡って来るんだよね。私みたいにイマイチの人とは雲泥の差があるんだよ。音大を成績優秀者で卒業しても、それで安定した仕事になんて就けない。今はね、あちこちのピアノ教室かけもちして子ども達にレッスンする毎日。でもやっぱり夢見ちゃう。私もコンサートやリサイタル開けるほどのピアニストになりたいって」
芽衣は黙って弥生の言葉に耳を傾けていた。
「だから、ね?私の分まで思い切りやっちゃって!見せつけてよ、これが東京芸術音楽大学のピアノ科の実力じゃー!って」
「うん、分かった。もう泣き言は言わない。私は佐賀先生の弟子で、弥生ちゃんの大親友なんだからねー!って、見せつけてやる」
「ええー?!芽衣、話聞いてた?」
「うん!もちろん」
「やれやれ……。ま、いっか」
二人はふふっと笑い合う。
美味しいランチを食べたあと、弥生は「芽衣のコンサートの衣装を選ぶ!」と言って、演奏家御用達のドレスショップに連れて行ってくれた。
「2部構成なんでしょ?じゃあ2着選んで衣装チェンジしなきゃね。えーっと、スプリングコンサートだから……」
弥生は次々とドレスを手にして、芽衣の身体に当ててみる。
「1部はこれ。薄い水色のサラッとしたドレスね。で、2部はゴリゴリ超絶技巧を弾くことになるだろうから、ワインレッドはどう?あ、そう言えば色気はどうした?」
「うっ、まだです」
「でしょうね。まあ、仕方ない。形から入ろう。じゃあこれで決まりね。あとは当日のヘアメイク、どうするの?」
「えっと、ノープランです」
「でしょうね。仕方ない、私が控え室でやってあげるわよ」
「いいの?弥生ちゃん、神!」
芽衣は両手を組んで目を輝かせながら、弥生を拝む。
「はいはい。私からの誕生日プレゼントってことで、ばっちり大変身させてあげるわよ。だからがんばるのよ?芽衣」
「うん!約束する」
「よし。あー、これで気兼ねなく超絶技巧の曲に投票出来るわ」
そう言って弥生は、あはは!と楽しそうに笑った。
「うん、元気!弥生ちゃんも元気そうだね」
5月のゴールデンウィークに、芽衣は弥生とランチに出かけることになった。
どうやら弥生は、聖と芽衣のコンサートについて、色々聞きたいらしい。
料理をオーダーすると、早速身を乗り出してきた。
「なんかさ、盛り上がってるよねー。ずっとベールに包まれてた伴奏ピアニストの正体が判明!しかもドリームステージは感動ものだったし。で、いよいよその二人の演奏が生で聴ける!しかも最後の曲は、視聴者参加型の人気投票で決定!これはもう、ワクワクが止まりませんよ。私もねー、どの曲に投票しようか、迷いに迷ってるんだ」
弥生が話せば話すほど、芽衣の眉間にはしわが寄る。
「ん?なんかぶっさいくな顔してますけど、どうかしました?」
「どうかするよ!だって、ただでさえ緊張するのに、どの曲か分かんないんだよ?練習しないでいきなり弾くなんて。しかもなんだか、超絶技巧の曲が人気みたいだしさ」
「そりゃあね、なかなか聴けないもん、あんなラインナップ。あー、楽しみだな。いつだっけ?コンサート。予定空けておかなきゃ」
「……5月24日」
「5月24日ね。って、え?芽衣の誕生日じゃない!」
「うん、よりによってそうなの。あー、心臓に悪い誕生日になりそうだな」
芽衣はどんよりしながらため息をつく。
「なーに言ってんの、あんな素敵なホールでピアノ弾けるんだよ?最高の誕生日じゃない。ハッピーバースデートゥーミー!だよ」
あはは!と芽衣は思わず笑い出した。
「弥生ちゃんって、超ポジティブだよね」
「そうよ?私が芽衣だったら、そんな暗い顔しない。嬉しくて神様に感謝して、何がなんでもがんばろうって思う。芽衣、すごく恵まれてるんだよ?」
弥生ちゃん……、と芽衣は言葉を失う。
「分かってる。芽衣は努力と才能の人だから、そういうチャンスがちゃんと巡って来るんだよね。私みたいにイマイチの人とは雲泥の差があるんだよ。音大を成績優秀者で卒業しても、それで安定した仕事になんて就けない。今はね、あちこちのピアノ教室かけもちして子ども達にレッスンする毎日。でもやっぱり夢見ちゃう。私もコンサートやリサイタル開けるほどのピアニストになりたいって」
芽衣は黙って弥生の言葉に耳を傾けていた。
「だから、ね?私の分まで思い切りやっちゃって!見せつけてよ、これが東京芸術音楽大学のピアノ科の実力じゃー!って」
「うん、分かった。もう泣き言は言わない。私は佐賀先生の弟子で、弥生ちゃんの大親友なんだからねー!って、見せつけてやる」
「ええー?!芽衣、話聞いてた?」
「うん!もちろん」
「やれやれ……。ま、いっか」
二人はふふっと笑い合う。
美味しいランチを食べたあと、弥生は「芽衣のコンサートの衣装を選ぶ!」と言って、演奏家御用達のドレスショップに連れて行ってくれた。
「2部構成なんでしょ?じゃあ2着選んで衣装チェンジしなきゃね。えーっと、スプリングコンサートだから……」
弥生は次々とドレスを手にして、芽衣の身体に当ててみる。
「1部はこれ。薄い水色のサラッとしたドレスね。で、2部はゴリゴリ超絶技巧を弾くことになるだろうから、ワインレッドはどう?あ、そう言えば色気はどうした?」
「うっ、まだです」
「でしょうね。まあ、仕方ない。形から入ろう。じゃあこれで決まりね。あとは当日のヘアメイク、どうするの?」
「えっと、ノープランです」
「でしょうね。仕方ない、私が控え室でやってあげるわよ」
「いいの?弥生ちゃん、神!」
芽衣は両手を組んで目を輝かせながら、弥生を拝む。
「はいはい。私からの誕生日プレゼントってことで、ばっちり大変身させてあげるわよ。だからがんばるのよ?芽衣」
「うん!約束する」
「よし。あー、これで気兼ねなく超絶技巧の曲に投票出来るわ」
そう言って弥生は、あはは!と楽しそうに笑った。