Bravissima!ブラヴィッシマ
「えーっと、詳しいタイムテーブルがこれね。カメリハ、音響照明との打ち合わせは午後からだけど、1日ホールは空けてあるから、好きな時間に入って練習してくれて構わない。ゲネプロも、しなくていいか。MCも俺だしね。二人に任せるよ」

公平の言葉を聞きながら、聖と芽衣は資料に目を通す。

コンサート5日前で、今日が最後の打ち合わせの日だった。

「そうだな。あんまりがっつりやって手がダメになっても困るし。音の響き方だけチェックしたら俺はもういいや。イスラメイは?」
「私もそんな感じで大丈夫です」
「ん。じゃあそういうことで。当日よろしく」

そう言って話を締めくくった聖に、公平が口を開いた。

「そうそう。その日の終演は夜の9時を予定してるんだ。それで理事長が、ホテルのスイートルームを押さえたから、そこで打ち上げしたらいいってさ」

ス、スイートルーム?!と芽衣は思わぬ話に目を丸くする。

「ホテルのスイートルームですか?」
「そう。この間フレンチレストランに行ったでしょ?あのホテル」
「あんな豪華なホテルのスイートルームに?わあー!ー般ピープルにとって、一生足を踏み入れることのない聖域に、この私が?そんなこと、許されるんですか?」

すると聖が、はあ?と声を上げた。

「何を大げさな。一体どんなところを想像してんだよ?」
「だって、スウィイート!ですよ?部屋の中にまた部屋がある、マトリョーシカみたいなスウィイートルーム!」
「おい、頭大丈夫か?コンサート心配になってきた」
「はあー、楽しみ!俄然やる気が湧いてきました。待っててね、マトリョーシカ・スウィイート!」
「……これ以上一緒にいるとヤバい。じゃ、またな」

本番当日までもう会えないというのに、聖は芽衣に目もくれずスタスタと部屋を出て行った。
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