Bravissima!ブラヴィッシマ
開演時間が近づく。
芽衣は控え室で水色のドレスに着替え、弥生にヘアメイクを整えてもらった。
「うん!可愛く出来た。おめでとう、バースデーガール!」
「ふふっ、なあに?それ。でもありがとう、弥生ちゃん。なんだかテンション上がって来た。ちょっとはいつもより大人っぽいかな?」
「あー、色気はないけどね」
「うぐぐ、それなんだよね。どうしよう、今日の人気投票で大人の色気のある曲に決まったら」
「カルメンとか?」
「あ、カルメンは私の色気不足により保留のままなんだ。動画にアップしてないから、投票はされないの」
へ?と目を丸くしてから、弥生は吹き出して笑う。
「色気不足によりって、ダメじゃん!芽衣。如月さん待たせちゃってるんでしょ?早く色気身に着けなよ」
「えー、どうやって?それが出来ればとっくに着けてるよー。どこかに売ってないかな?色気って」
「んー、じゃあ私がTシャツに『色気』って書いてプレゼントしてあげる」
「それで『色気身に着けました』って?やだー!絶対にズシャッて弓でぶった斬られるもん」
あはは!と二人で笑い転げていると、コンコンとノックの音がした。
はーい!と返事をして弥生がドアを開ける。
「あ、公平さん!」
「どう?弥生ちゃん。ヘアメイクは終わった?」
「ええ。色気は残念ながらどうしようもなかったんですけど、可愛い芽衣には仕上がりました」
「あはは!そうなんだ」
何やら話のネタにされて、芽衣はむくれる。
それにいつの間にか親しそうな二人にも首をひねった。
「芽衣ちゃん、そろそろ袖に移動してくれる?」
「はい、今行きます」
ハンカチと楽譜を手に、控え室を出る。
「じゃあね、芽衣。客席からパワーを送るね。あ、超絶技巧に投票するから、覚悟しといて」
「うぐっ、ありがとう弥生ちゃん。超絶技巧、オラオラーってがんばって弾くね」
バイバイと手を振ると、弥生は公平と肩を並べて楽しそうに通路を歩いて行く。
(ん?あの二人、なんかあったのかな?)
首を傾げて見送っていると、「どうした?」と後ろから声がした。
「あ、如月さん。わあ、かっこいい!」
振り返った芽衣は、タキシードに身を包み、ビシッと髪型を整えた聖に目を見開く。
「大変身じゃないですか。いつものボサボサ頭とだらりんスタイル、あと寝ぼけた半開きの目が、今は見違えるように別人です!」
「……お前、嬉々として人を褒め殺すの、どうにかしろ」
「本心ですよ?」
「ますますあかんわ!」
まったく……と呟く聖と一緒に、芽衣も舞台袖に行く。
モニターを見上げると、ホールは満席。
コンサートを楽しみにしているワクワクとした表情の観客で溢れていた。
「なんだか私、不思議なくらい緊張してないんですけど」
モニターを見つめたまま、芽衣はポツリと呟く。
「そりゃそうだろ。俺が緊張してないんだから」
「はい?どういう理屈なんですか?それ」
「緊張は伝播する。俺が緊張すればお前も緊張する。だから俺は緊張しない。お前が緊張しないように」
「………キンチョール?」
「は?おい、バカになるのだけはやめてくれ」
「だって緊張ーる緊張ーるって、それしか頭に入って来なくて。なんだか、早口言葉みたい」
「やれやれ、力が抜けたわ」
開演のブザーが鳴る。
いつの間にか後ろに控えていた公平が、二人に声をかけた。
「二人の音を楽しみにしてる。行ってらっしゃい」
「行って来ます」
三人で頷き合い、芽衣は聖に続いて舞台へと歩み出た。
芽衣は控え室で水色のドレスに着替え、弥生にヘアメイクを整えてもらった。
「うん!可愛く出来た。おめでとう、バースデーガール!」
「ふふっ、なあに?それ。でもありがとう、弥生ちゃん。なんだかテンション上がって来た。ちょっとはいつもより大人っぽいかな?」
「あー、色気はないけどね」
「うぐぐ、それなんだよね。どうしよう、今日の人気投票で大人の色気のある曲に決まったら」
「カルメンとか?」
「あ、カルメンは私の色気不足により保留のままなんだ。動画にアップしてないから、投票はされないの」
へ?と目を丸くしてから、弥生は吹き出して笑う。
「色気不足によりって、ダメじゃん!芽衣。如月さん待たせちゃってるんでしょ?早く色気身に着けなよ」
「えー、どうやって?それが出来ればとっくに着けてるよー。どこかに売ってないかな?色気って」
「んー、じゃあ私がTシャツに『色気』って書いてプレゼントしてあげる」
「それで『色気身に着けました』って?やだー!絶対にズシャッて弓でぶった斬られるもん」
あはは!と二人で笑い転げていると、コンコンとノックの音がした。
はーい!と返事をして弥生がドアを開ける。
「あ、公平さん!」
「どう?弥生ちゃん。ヘアメイクは終わった?」
「ええ。色気は残念ながらどうしようもなかったんですけど、可愛い芽衣には仕上がりました」
「あはは!そうなんだ」
何やら話のネタにされて、芽衣はむくれる。
それにいつの間にか親しそうな二人にも首をひねった。
「芽衣ちゃん、そろそろ袖に移動してくれる?」
「はい、今行きます」
ハンカチと楽譜を手に、控え室を出る。
「じゃあね、芽衣。客席からパワーを送るね。あ、超絶技巧に投票するから、覚悟しといて」
「うぐっ、ありがとう弥生ちゃん。超絶技巧、オラオラーってがんばって弾くね」
バイバイと手を振ると、弥生は公平と肩を並べて楽しそうに通路を歩いて行く。
(ん?あの二人、なんかあったのかな?)
首を傾げて見送っていると、「どうした?」と後ろから声がした。
「あ、如月さん。わあ、かっこいい!」
振り返った芽衣は、タキシードに身を包み、ビシッと髪型を整えた聖に目を見開く。
「大変身じゃないですか。いつものボサボサ頭とだらりんスタイル、あと寝ぼけた半開きの目が、今は見違えるように別人です!」
「……お前、嬉々として人を褒め殺すの、どうにかしろ」
「本心ですよ?」
「ますますあかんわ!」
まったく……と呟く聖と一緒に、芽衣も舞台袖に行く。
モニターを見上げると、ホールは満席。
コンサートを楽しみにしているワクワクとした表情の観客で溢れていた。
「なんだか私、不思議なくらい緊張してないんですけど」
モニターを見つめたまま、芽衣はポツリと呟く。
「そりゃそうだろ。俺が緊張してないんだから」
「はい?どういう理屈なんですか?それ」
「緊張は伝播する。俺が緊張すればお前も緊張する。だから俺は緊張しない。お前が緊張しないように」
「………キンチョール?」
「は?おい、バカになるのだけはやめてくれ」
「だって緊張ーる緊張ーるって、それしか頭に入って来なくて。なんだか、早口言葉みたい」
「やれやれ、力が抜けたわ」
開演のブザーが鳴る。
いつの間にか後ろに控えていた公平が、二人に声をかけた。
「二人の音を楽しみにしてる。行ってらっしゃい」
「行って来ます」
三人で頷き合い、芽衣は聖に続いて舞台へと歩み出た。