Bravissima!ブラヴィッシマ
『お、早速聴いてくれたのかい?どうだった?』

電話の向こうで楽しそうな教授の声がする。

あのあと公平も、1番から順に全ての演奏を聴いてみた。

バッハやモーツァルト、ショパンやリストなど、様々な作曲家の曲があり、超絶技巧を駆使した高度なテクニックの演奏者もいたが、聴けば聴くほど「やっぱりあの演奏だな」と再確認するだけだった。

「はい。一人だけ桁違いの演奏がありました」
『そうだろうな。私もそう思うよ』
「どの曲か、お尋ねにならないのですか?」
『必要あるかい?』

公平は思わず笑みをこぼす。

「ないですね。佐賀先生、ぜひとも彼にお願いしたいです。聖も、すぐにでも生で演奏を聴きたいと言っていました」
『分かった、私からその生徒に話をしておくよ。ちょっと内気な性格だから渋るかもしれないけど、私としてもぜひこの話は引き受けるべきだと説得してみる』
「はい、よろしくお願いします」
『ああ。良い話をありがとう』

そして『あ、そうそう』と教授は面白そうに付け加えた。

『一つだけ訂正させてくれ。君はさっき、彼にお願いしたいと言ったけど、彼じゃないんだ』
「は?と、おっしゃいますと?」
『あの演奏はうちの音大の4年生、木村 芽衣(めい)って学生が弾いていたんだ』
「きむら、めい?って、え?!女の子ですか?まさか!あのダイナミックな演奏を、女の子が?」
『そうだよ。木村 芽衣のイスラメイ。どうだい?なかなかいいだろう?』

あはは!と楽しげに笑う教授に、公平はポカンとしたまま言葉を失っていた。
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