Bravissima!ブラヴィッシマ
ダブルアンコールに、ストラヴィンスキー作曲のバレエ音楽《火の鳥》カスチェイ王の魔の踊りを演奏し、それでも鳴り止まないカーテンコールに応えて何度も挨拶したあと、ようやくコンサートは無事に終演となった。

「お疲れ様!なんか色々あったみたいだけど、とにかく良かったぞ、二人とも」

公平は苦笑いを浮かべながら二人を労う。

「ほんとだよ、ったく。演奏とは別のところで疲れたわ」
「まだ言いますか?!もう、終わったことはいいでしょ?」
「なんだよ!かき乱した張本人がケロッとしてるって、おかしいだろ?!」

はいはい、と公平は二人を引き離した。

「とにかく着替えて来いよ。このあとは楽しい打ち上げだぞー!」
「そうだ!マトリョーシカのスウィイートルーム!やったー、るんるん!着替えて来まーす!」

芽衣はご機嫌で控え室へと向かい、残された聖は深いため息をついた。

すると芽衣と入れ違うように、理事長がやって来る。

「おお、聖!なかなかのコンサートだったぞ」
「そうですか。それは何より」
「なんだ?もっと嬉しそうにせんか」
「はあ、これが精一杯です」
「ははは!さすがのお前も精根尽きたか?」
「別の意味で吸い取られました」

あはは!と理事長はおかしそうに笑うと、ポンポンと聖の肩を叩く。

「お疲れ。ホテルでゆっくり疲れを癒やすといい。ルームサービスでコース料理とシャンパン頼んでおいたからな」
「ありがとうございまーす」
「ははは!こんなしおらしい聖は初めてだな。なかなか貴重だ。さてと、イスラメイちゃんにも挨拶して来よう。またな、聖」
「はーい。お疲れ様でーす」

理事長は愉快気に笑って、手を挙げながら去って行った。
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