Bravissima!ブラヴィッシマ
ピアノを弾き終わり、ソファに戻って来た弥生は、如月フィルの公式動画サイトから今夜のコンサートのアーカイブ配信を観てゲラゲラ笑っている。

「そうだった、ライブ配信されてたんだった。っていうか、弥生ちゃん。演奏すっ飛ばしてしゃべりのところだけ聞いてるよね?」
「だっておっかしいんだもん!このガイコツのくだり。あはは!しかもさ、けんかしてるのに演奏は息ぴったりで、お辞儀したあと手を繋いで袖にはけて行くの。もう最高!」

ひとしきり笑うと、弥生は鞄を手に立ち上がった。

「さてと!それじゃあ、私はそろそろ失礼します」
「弥生ちゃんも、芽衣ちゃんと同じ部屋に泊まったらいいのに」

公平がそう言うが、弥生は首を振る。

「そうしたいのは山々なんですけど、私、実家暮らしなので。当日の急な外泊は、父が騒いで大変なことになるんです」
「あはは!前にそんなことがあったんだ」
「そうなんです。スマホに鬼電かかってくるし、次の日帰ったらメソメソ泣いてるし」
「へえ、箱入り娘なんだね、弥生ちゃん。お父さんに愛されてて」
「生まれる前に弥生って名前に決めちゃった、ちょっと抜けてる親ですけどね」
「ははっ!じゃあ早く帰ろう。お父さんが泣いちゃう前にね」

そして公平は、弥生をうちまでタクシーで送ることになった。

「聖、俺も今夜はそのままうちに帰るわ。行こうか、弥生ちゃん」
「はい。それでは如月さん、失礼します。今夜はありがとうございました。芽衣、またね!」

そう言って二人は仲良く部屋を出て行った。
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