Bravissima!ブラヴィッシマ
「芽衣、もうここに引っ越して来たら?ピアノいつでも弾けるぞ?」

夕食を食べながら聖が尋ねる。

芽衣には合鍵を渡し、弾きたくなったらいつでもおいでと言ってあった。

大学を卒業してピアノの練習が思うように出来なくなっていた芽衣は、恐縮しつつも喜び、時間があれば聖のマンションに来てピアノを弾く。
そんな生活が、かれこれ3か月続いていた。

「うーん。でも引っ越すなんて、そんなことしていいのかな。だって、ほら。そういうのって……」
「ああ。同棲ってこと?」
「う、うん」

芽衣はその単語だけで恥ずかしがっている。

聖はそんな芽衣が可愛くて仕方ない。

「じゃあ、芽衣のご両親に挨拶に行こう。お許しをもらったら引っ越しておいで」
「許しって、引っ越しの?」
「違う。結婚の」

芽衣は目を真ん丸にして息を呑む。

「芽衣。目玉が落っこちるぞ」
「だって、驚いて飛び出ちゃって」
「いや、飛び出てはない。とにかく瞬きして」

芽衣は言われた通りに、ぱちぱちと瞬きを繰り返した。

「落ち着いたか?」
「うん」
「じゃあ、結婚しよう」
「は?どの流れで?」
「この流れ。結婚を前提に一緒に住むならいいんだろ?」

すると芽衣は、戸惑ったようにうつむく。

「芽衣?」

優しく名前を呼んで顔を覗き込むと、芽衣はおずおずと視線を上げてからまたうつむく。

聖は少し考えてから立ち上がり、芽衣の手を取ってソファに向かうと、二人で並んで座った。
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