Bravissima!ブラヴィッシマ
「どうした?何か不安?」
両手で芽衣の手を包み込み、そっと尋ねると、芽衣は小さく話し出す。
「あのね」
「うん、なに?」
「自信がなくて、少し怖いの」
「……何が怖いの?」
「いつか、如月さんにフラれるんじゃないかって」
聖は驚いて目を見開く。
すぐにでも否定したい。
だが芽衣の言葉を根気強く待った。
「弥生ちゃんがね、本当に幸せそうなの。高瀬さんに愛されて、キラキラ輝いてて可愛くて。でも私は、あんなふうにはなれない。自分が魅力的だと思えないから。如月さんは、いつか他の人のところに行ってしまうかもしれないって、不安なの。私よりも綺麗で素敵な人はたくさんいるから」
沈黙が広がり、芽衣は耐えかねて顔を上げる。
「あの、如月さん?」
「芽衣、俺のこと誤解し過ぎ」
え、と芽衣は言葉を失う。
何のことを言っているのか、見当がつかなかった。
「俺が他の女のところに行くって?こんなにも芽衣のことしか見えてないのに?目をそらす余裕すらない。芽衣、俺さ。必死に気持ちを抑え込んでるんだ。でないと芽衣をめちゃくちゃにしそうで。感情のままに芽衣を抱いて、芽衣を怖がらせてしまいそうで。だから必死で自分を押さえつけてる。本当は早く、今すぐにでも結婚したい。片時も離したくない。だけど芽衣を大切に守りたいから、少しずつ時間をかけたいと思ってる。それと、ごめん。俺、『愛してる』って軽く言えるタイプじゃないんだ。それだとやっぱり不安?」
真っ直ぐに見つめられ、芽衣は涙を堪えながら首を振る。
「ううん、そんなことない。ごめんなさい、気弱なこと言って。私、こんなにも大切にされてたのに、信じてないようなこと言って本当にごめんなさい」
「謝らなくていい。けど、これからは自信持って。俺、こう言っちゃなんだけど、ヴァイオリン弾いてるせいか、今まで色んな人に言い寄られてきたんだ。だけど心惹かれたのは芽衣だけだ。初めて、我を忘れるほど人を好きになった」
芽衣は目をぱちくりしたあと、たまらずに笑い出す。
「なあに?いきなり武勇伝語りました?」
「ちがっ、真面目な話!」
「真面目に語るの?色んな人に言い寄られてきたって」
「なんだよ。誰かさんが俺にフラれるかも、なんてあり得ないこと言うからだろ?」
「えー、あり得ないこと?」
「ああ。100%あり得ない」
芽衣はふふっとおかしそうに笑う。
「今のご時世はね、何でも100%って言い切らない方がいいんだよ?99%除菌!って言うでしょ?」
「アホ!俺の愛情をハンドソープと一緒にするな」
「あはは!手に優しいハンドソープ?」
「もう、芽衣!」
聖はギュッと芽衣を胸に抱きしめた。
「分かった?俺がどんなに芽衣を好きか。まだ分からないなら、身体で分からせてあげるけど?」
「だ、大丈夫です。充分理解しました」
「それならよろしい」
「あの、如月さん?」
「ん?なに」
芽衣はそっと聖を見上げる。
「これからは……、聖さんって、呼んでもいい?」
小さく首を傾げて尋ねてくる芽衣に、聖はそれこそこぼれ落ちそうなほど目を見開く。
そして一気に顔を赤らめた。
「ちょ、ごめん、マジでヤバい」
芽衣を抱く手をほどき、視線をそらしてうつむくと、聖は額に手を当てて大きく息を吐く。
「はあー嬉しい、可愛い、たまらん、抱きたい、でもダメ、嫌われたくない、あー、反則、可愛すぎる、幸せ」
「あの、心の声が漏れてますが……?」
「芽衣」
「はい」
「もう一回呼んで?」
「えっと……、聖さん?」
すると聖は頭を抱えて悶絶する。
「あかん、すごい破壊力。こんなん、心臓がもたんやろ。幸せやー。めっちゃ可愛い。けどますます我慢や。我慢大会やで。はー、超可愛い。何回でも呼んで欲しいわ」
「あの、関西人になりました?」
芽衣はふっと笑みをこぼしてから、聖の首に腕を回して抱きついた。
「こんなに想われてるんだって分かったら、ちょっと自信がつきました。私、ずっと聖さんのそばにいてもいい?」
芽衣……と聖は言葉に詰まる。
「当たり前だ、ずっとそばにいろ。俺のヴァイオリンも、芽衣のピアノを求めてる。俺だって、芽衣じゃなきゃダメなんだ」
「うん。私のピアノも、聖さんのヴァイオリンに寄り添いたがってる。私だって、聖さんじゃなきゃダメなの」
「ああ。ずっと一緒にいよう、芽衣」
「はい。聖さん、私と結婚してください」
聖の目が一気に潤んだ。
芽衣をギュッと胸に抱きしめ、耳元でささやく。
「ああ。結婚しよう、芽衣。これから先、俺が弾くヴァイオリンは、全て芽衣に捧げる。俺の心も愛情も。俺の全てを芽衣だけに捧げる」
「聖さん……。私もあなたを想ってピアノを弾きます。私の心も身体も、何一つ残らず、私の全てをあなたに捧げます」
「芽衣……」
愛おしそうに見つめると、聖は芽衣の頬に手を添えて優しくキスをする。
二人を隔てるものは何もない。
聖のヴァイオリンと芽衣のピアノが溶け合うように、二人の心も愛によって溶かされる。
もう二度と離れられない。
最愛の人を見つけたのだから。
心が幸せで満ち溢れるのを感じながら、聖と芽衣は互いの温もりと確かな愛情に包まれていた。
両手で芽衣の手を包み込み、そっと尋ねると、芽衣は小さく話し出す。
「あのね」
「うん、なに?」
「自信がなくて、少し怖いの」
「……何が怖いの?」
「いつか、如月さんにフラれるんじゃないかって」
聖は驚いて目を見開く。
すぐにでも否定したい。
だが芽衣の言葉を根気強く待った。
「弥生ちゃんがね、本当に幸せそうなの。高瀬さんに愛されて、キラキラ輝いてて可愛くて。でも私は、あんなふうにはなれない。自分が魅力的だと思えないから。如月さんは、いつか他の人のところに行ってしまうかもしれないって、不安なの。私よりも綺麗で素敵な人はたくさんいるから」
沈黙が広がり、芽衣は耐えかねて顔を上げる。
「あの、如月さん?」
「芽衣、俺のこと誤解し過ぎ」
え、と芽衣は言葉を失う。
何のことを言っているのか、見当がつかなかった。
「俺が他の女のところに行くって?こんなにも芽衣のことしか見えてないのに?目をそらす余裕すらない。芽衣、俺さ。必死に気持ちを抑え込んでるんだ。でないと芽衣をめちゃくちゃにしそうで。感情のままに芽衣を抱いて、芽衣を怖がらせてしまいそうで。だから必死で自分を押さえつけてる。本当は早く、今すぐにでも結婚したい。片時も離したくない。だけど芽衣を大切に守りたいから、少しずつ時間をかけたいと思ってる。それと、ごめん。俺、『愛してる』って軽く言えるタイプじゃないんだ。それだとやっぱり不安?」
真っ直ぐに見つめられ、芽衣は涙を堪えながら首を振る。
「ううん、そんなことない。ごめんなさい、気弱なこと言って。私、こんなにも大切にされてたのに、信じてないようなこと言って本当にごめんなさい」
「謝らなくていい。けど、これからは自信持って。俺、こう言っちゃなんだけど、ヴァイオリン弾いてるせいか、今まで色んな人に言い寄られてきたんだ。だけど心惹かれたのは芽衣だけだ。初めて、我を忘れるほど人を好きになった」
芽衣は目をぱちくりしたあと、たまらずに笑い出す。
「なあに?いきなり武勇伝語りました?」
「ちがっ、真面目な話!」
「真面目に語るの?色んな人に言い寄られてきたって」
「なんだよ。誰かさんが俺にフラれるかも、なんてあり得ないこと言うからだろ?」
「えー、あり得ないこと?」
「ああ。100%あり得ない」
芽衣はふふっとおかしそうに笑う。
「今のご時世はね、何でも100%って言い切らない方がいいんだよ?99%除菌!って言うでしょ?」
「アホ!俺の愛情をハンドソープと一緒にするな」
「あはは!手に優しいハンドソープ?」
「もう、芽衣!」
聖はギュッと芽衣を胸に抱きしめた。
「分かった?俺がどんなに芽衣を好きか。まだ分からないなら、身体で分からせてあげるけど?」
「だ、大丈夫です。充分理解しました」
「それならよろしい」
「あの、如月さん?」
「ん?なに」
芽衣はそっと聖を見上げる。
「これからは……、聖さんって、呼んでもいい?」
小さく首を傾げて尋ねてくる芽衣に、聖はそれこそこぼれ落ちそうなほど目を見開く。
そして一気に顔を赤らめた。
「ちょ、ごめん、マジでヤバい」
芽衣を抱く手をほどき、視線をそらしてうつむくと、聖は額に手を当てて大きく息を吐く。
「はあー嬉しい、可愛い、たまらん、抱きたい、でもダメ、嫌われたくない、あー、反則、可愛すぎる、幸せ」
「あの、心の声が漏れてますが……?」
「芽衣」
「はい」
「もう一回呼んで?」
「えっと……、聖さん?」
すると聖は頭を抱えて悶絶する。
「あかん、すごい破壊力。こんなん、心臓がもたんやろ。幸せやー。めっちゃ可愛い。けどますます我慢や。我慢大会やで。はー、超可愛い。何回でも呼んで欲しいわ」
「あの、関西人になりました?」
芽衣はふっと笑みをこぼしてから、聖の首に腕を回して抱きついた。
「こんなに想われてるんだって分かったら、ちょっと自信がつきました。私、ずっと聖さんのそばにいてもいい?」
芽衣……と聖は言葉に詰まる。
「当たり前だ、ずっとそばにいろ。俺のヴァイオリンも、芽衣のピアノを求めてる。俺だって、芽衣じゃなきゃダメなんだ」
「うん。私のピアノも、聖さんのヴァイオリンに寄り添いたがってる。私だって、聖さんじゃなきゃダメなの」
「ああ。ずっと一緒にいよう、芽衣」
「はい。聖さん、私と結婚してください」
聖の目が一気に潤んだ。
芽衣をギュッと胸に抱きしめ、耳元でささやく。
「ああ。結婚しよう、芽衣。これから先、俺が弾くヴァイオリンは、全て芽衣に捧げる。俺の心も愛情も。俺の全てを芽衣だけに捧げる」
「聖さん……。私もあなたを想ってピアノを弾きます。私の心も身体も、何一つ残らず、私の全てをあなたに捧げます」
「芽衣……」
愛おしそうに見つめると、聖は芽衣の頬に手を添えて優しくキスをする。
二人を隔てるものは何もない。
聖のヴァイオリンと芽衣のピアノが溶け合うように、二人の心も愛によって溶かされる。
もう二度と離れられない。
最愛の人を見つけたのだから。
心が幸せで満ち溢れるのを感じながら、聖と芽衣は互いの温もりと確かな愛情に包まれていた。