Bravissima!ブラヴィッシマ
(嘘だろ……)

そのひと言が浮かんだあと、公平と聖の思考回路は完全に途絶えてしまった。

雷に打たれたように全身に衝撃が走り、指先までしびれたような感覚に陥る。

音源を聴いた時の何倍ものショックに、もはや何も言葉が出て来ない。

この小柄な女の子の、どこにこんなパワーが?

今自分の目の前で繰り広げられている演奏だが、どうしても信じられなかった。

ピアノは自分の前方にあるのに、後ろからも上からも音がビリビリと伝わってくる。

四方八方から射抜かれる音圧に必死に耐えているうちに、美しい旋律に心がふわっと軽くなる瞬間が訪れた。

色が変わり、温度が上がる。

胸いっぱいに幸福感が込み上げてきて、思わず感嘆のため息をつく。

恍惚の表情を浮かべる女の子から目が離せない。

温かい幸せに包まれているうちに、いつの間にかテンポが上がり、ドキドキと胸が高鳴り始めた。

もはや誰にも止められない。
凄まじいエネルギーで紡ぎ出される数え切れないほどの音の粒。

鮮やかに軽やかに、ダイナミックに情緒豊かに。

興奮と感動、そして素晴らしい音楽に巡り会えた多幸感。

身体中の細胞が一気に活性化したような感覚を覚える。

ラストまで一気に駆け抜け、女の子はゴージャスに最後の音を響かせた。
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