Bravissima!ブラヴィッシマ
「弥生ちゃん、とっても綺麗!」

花嫁の控え室に入るなり、芽衣は弥生のウェディングドレス姿に目を見開いた。

「ふふっ、ありがと。芽衣のワンピースも可愛いよ。結婚、お先に失礼しまーす」
「あはは!うん、お先に行ってらっしゃーい」

今日は12月14日、公平と弥生の結婚式の日。
そして12月25日には、聖と芽衣の結婚式が控えていた。

二人でドレスの試着に行き、互いの姿に「素敵!これにしなよ」と褒め合った日が懐かしい。

「試着した時に見てるはずなのに、今日の弥生ちゃんの美しさに言葉が出て来ないよ。きっと幸せのオーラのせいだね。キラキラしてる」
「あら、ありがと。芽衣だってきっとそうなるわよ。楽しみだなー」
「今日は私カメラマンになって、たくさん写真を撮るからね」
「うん。芽衣の結婚式は私がカメラマンになるから」

二人で微笑み合うと、あとでね、と芽衣は控え室を出た。

廊下で待っていた聖が芽衣に優しく手を差し伸べる。

「行こう、芽衣」
「はい」

腕を組んで歩き出すと、芽衣はスリーピースの礼服を着こなした聖をこそっと見上げた。

(ぐふっ、今日の聖さんめちゃくちゃかっこいい!)

すると背筋を伸ばして前を向いたまま、聖が呟く。

「芽衣、黙ってニヤニヤしてると不気味」
「えっ、そんな顔してませんよ?」
「どこがだよ?ちなみに、ぐふって笑ったのも聞こえたぞ」
「嘘!やだー、ほんとに?」
「お前の考えてること、ダダ漏れだからな」
「聖さんの考えてることだって、いっつもダダ漏れだもん」

そう言うと芽衣は、指折りながら小声で呟く。

「あー、可愛い、たまらん、好きだ、俺の芽衣……」
「ちょっ、芽衣!」

聖は立ち止まって芽衣をギュッと胸に抱きしめると、辺りをキョロキョロと見渡した。

「誰かに聞かれたら恥ずかしいだろ!今日は如月フィルの関係者もたくさん来てるんだぞ?」
「それなら、こうやって抱きしめてるのを見られても困るんじゃないの?」

言われて聖はハッと芽衣を抱いていた手を離す。

「だって、芽衣の口を塞ごうと思ってつい」
「だったら普通に手で塞げばいいのに」
「あ、そうか。抱いた方が早いと思って」
「ちょっと!それこそ聞かれたら恥ずかしいでしょ?もう、聖さんったらなんかずれてる。『愛してる』なんて恥ずかしくて言えない、とか言って、やってることの方がよっぽど恥ずかしいですよ?」
「仕方ないだろ?『幸せなら手を叩こ』ってやつだよ」
「あはは!『幸せなら態度で示そうよ』って?」
「そう。『ほらみんなで手を叩こ』」

パンパン、と二人で手を叩き、あはは!と笑い合う。

そして仲良く手を繋いでチャペルへと歩き始めた。
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