Bravissima!ブラヴィッシマ
チャペルに響き渡る美しい音色。

プッチーニ作曲 歌劇《ジャンニ・スキッキ》より「私のお父さん」

厳かな雰囲気で弦楽四重奏が奏でる中、弥生が父と腕を組んで入場して来た。

(わあ。弥生ちゃん、本当に綺麗)

ベールに覆われて少しうつむきながら微笑みを浮かべている弥生は、祭壇の前で待っている公平に近づくにつれて、はにかんだように頬を染めた。

(可愛い。弥生ちゃん、乙女。あ!お父さん泣いちゃってる)

必死に堪えようとしているのか、弥生の父はブルブルと口元を震わせ、涙がこぼれ落ちないように必死で上を向いている。

やがて公平のもとにたどり着くと、父は限界だとばかりに涙をこぼした。

「公平くん。弥生を、弥生をどうか、よろしく、頼みます」

ちょっとお父さん、恥ずかしいでしょ、と弥生が父の腕を引くが、公平はきりっとした顔つきで頷いた。

「はい。お父さんの分も、私が必ず弥生さんを幸せにいたします。弥生さんの笑顔を、いつまでも私が守っていきます」
「ありがとう、公平くん。ううう、本当に、ありがとう」

もう……と呆れてから、弥生は父に向かい合った。

「お父さん。私を今まで大切に育ててくれてありがとう。お父さんとの思い出、絶対に忘れないよ。これからは公平さんと一緒に、お父さんが作ってくれたみたいな温かい家庭を作るね」
「うううー、弥生、そんなこと言っちゃダメだろ。父さんもう、涙が……」

すると最前列の列席者の席から母親が手を伸ばし、グイッと父の腕を掴んで強引に座らせる。

「ごめんなさいねー。はい、お気になさらずどうぞ進めて」

ははは!と列席者から笑いが起こり、公平と弥生は幸せそうに見つめ合ってから祭壇を上がった。
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