Bravissima!ブラヴィッシマ
「改めまして、ハッピーニューイヤー!」
元旦の午後。
聖と芽衣のマンションに、公平と弥生が車で迎えに来てくれた。
「ジルベスター、お疲れ様!とーっても良かったよ、芽衣。色々てんこ盛りでさ。ぐふふ!」
弥生に抱きつかれて、芽衣は苦笑いを浮かべる。
「弥生ちゃん、今年もお手柔らかによろしくね。あー、新年早々やらかしたわ」
「ぜーんぜん!いいもの見せてもらって、幸先いいわ。ほら、芽衣と如月さんはお疲れだろうから、後ろの席で休んでて。私と公平さんで交代で運転するからね」
「ありがとう」
コンサート終了後、芽衣の手を引いて急いで帰宅した聖は、マンションに着くと片時も芽衣を離さなかった。
コンサートの余韻と興奮、芽衣への称賛と愛しさ。
止められない想いが込み上げ、聖は一睡もしないまま、腕枕した芽衣の髪をなでつつ夜を明かした。
おかげで公平が車を走らせ始めると、聖はすぐにスーッと眠りに落ちる。
芽衣は手にしていたコートを、そっと聖に掛けた。
バックミラーでその様子を見ていた弥生が、助手席から話しかける。
「芽衣、幸せだね」
「え?急になあに?」
「うん。私さ、大学の4年間ずっと芽衣を見てきたでしょ?ピアノは抜群に上手いのに、いつも自信なさそうに何かに悩んでて。もったいないなー。あんなに上手いのに、何を悩むことがあるんだろうって、最初の頃は思ってた」
弥生は当時を思い出すように、遠くに目をやりながらゆっくりと話す。
「4年生になってもまだ芽衣は悩んだままで、コンクールにも出ないしオーディションも受けない。音楽の神様は、芽衣に才能だけ与えて見放してしまうの?って心配だった。だから昨日は本当に嬉しかったの。芽衣がキラキラ輝く場所にいて、芽衣の音楽を生き生きと響かせてて。そんな芽衣を、如月さんが温かく後ろから見守ってるの。もう感動して涙が込み上げてきたんだ。良かったね、芽衣。幸せになれたね」
弥生ちゃん……と、芽衣の目頭が熱くなる。
「でもさ、そのあとは爆笑して違う涙が出て来た。あっはは!思い出しただけで笑える。カウントダウン、ハマったー!と思ったら、ぴょんぴょんしながら如月さんに抱きついた芽衣!で、如月さんも驚きつつ、嬉しそうに芽衣のこと抱きしめてるの。うわっ、ラブラブ!って思ったら、芽衣、ギャー!って飛び退いて、馬の被り物してスタコラ退場。もうさ、コントよ、コント」
すると公平までもが、運転しながら、ははは!と笑い出した。
「ほんとだよ。俺、マイク持って笑い堪えるの必死だった。新年の挨拶しなきゃいけないのに、のっけからこんなオモロイ展開あるー?って」
「そうだよね、私もハラハラした。公平さん、どうするのー?って。でも私の周りの人もみんな大笑いしてたよ。楽しかったーって」
芽衣はもう、これ以上ないほど小さく縮こまる。
「私、もっとちゃんとした人間だったのに。真面目でお堅い性格のはずなんだけどなあ」
うつむいて呟いていると、弥生が振り返った。
「でもさ、今の芽衣の方が断然いいよ。必要以上に緊張して固くなってたのが、今は生き生きとピアノ弾いてさ。悩みを抱えて暗い表情だったのが、今や舞台にいること忘れて、大好きな如月さんにぴょんぴょん抱きつくの。あー、可愛い!」
「うぐっ、弥生ちゃん、それはもう忘れて」
「こんな面白いこと、絶対忘れられなーい!あはは!」
その後も弥生を中心に明るくおしゃべりを続け、あっという間に別荘に到着した。
元旦の午後。
聖と芽衣のマンションに、公平と弥生が車で迎えに来てくれた。
「ジルベスター、お疲れ様!とーっても良かったよ、芽衣。色々てんこ盛りでさ。ぐふふ!」
弥生に抱きつかれて、芽衣は苦笑いを浮かべる。
「弥生ちゃん、今年もお手柔らかによろしくね。あー、新年早々やらかしたわ」
「ぜーんぜん!いいもの見せてもらって、幸先いいわ。ほら、芽衣と如月さんはお疲れだろうから、後ろの席で休んでて。私と公平さんで交代で運転するからね」
「ありがとう」
コンサート終了後、芽衣の手を引いて急いで帰宅した聖は、マンションに着くと片時も芽衣を離さなかった。
コンサートの余韻と興奮、芽衣への称賛と愛しさ。
止められない想いが込み上げ、聖は一睡もしないまま、腕枕した芽衣の髪をなでつつ夜を明かした。
おかげで公平が車を走らせ始めると、聖はすぐにスーッと眠りに落ちる。
芽衣は手にしていたコートを、そっと聖に掛けた。
バックミラーでその様子を見ていた弥生が、助手席から話しかける。
「芽衣、幸せだね」
「え?急になあに?」
「うん。私さ、大学の4年間ずっと芽衣を見てきたでしょ?ピアノは抜群に上手いのに、いつも自信なさそうに何かに悩んでて。もったいないなー。あんなに上手いのに、何を悩むことがあるんだろうって、最初の頃は思ってた」
弥生は当時を思い出すように、遠くに目をやりながらゆっくりと話す。
「4年生になってもまだ芽衣は悩んだままで、コンクールにも出ないしオーディションも受けない。音楽の神様は、芽衣に才能だけ与えて見放してしまうの?って心配だった。だから昨日は本当に嬉しかったの。芽衣がキラキラ輝く場所にいて、芽衣の音楽を生き生きと響かせてて。そんな芽衣を、如月さんが温かく後ろから見守ってるの。もう感動して涙が込み上げてきたんだ。良かったね、芽衣。幸せになれたね」
弥生ちゃん……と、芽衣の目頭が熱くなる。
「でもさ、そのあとは爆笑して違う涙が出て来た。あっはは!思い出しただけで笑える。カウントダウン、ハマったー!と思ったら、ぴょんぴょんしながら如月さんに抱きついた芽衣!で、如月さんも驚きつつ、嬉しそうに芽衣のこと抱きしめてるの。うわっ、ラブラブ!って思ったら、芽衣、ギャー!って飛び退いて、馬の被り物してスタコラ退場。もうさ、コントよ、コント」
すると公平までもが、運転しながら、ははは!と笑い出した。
「ほんとだよ。俺、マイク持って笑い堪えるの必死だった。新年の挨拶しなきゃいけないのに、のっけからこんなオモロイ展開あるー?って」
「そうだよね、私もハラハラした。公平さん、どうするのー?って。でも私の周りの人もみんな大笑いしてたよ。楽しかったーって」
芽衣はもう、これ以上ないほど小さく縮こまる。
「私、もっとちゃんとした人間だったのに。真面目でお堅い性格のはずなんだけどなあ」
うつむいて呟いていると、弥生が振り返った。
「でもさ、今の芽衣の方が断然いいよ。必要以上に緊張して固くなってたのが、今は生き生きとピアノ弾いてさ。悩みを抱えて暗い表情だったのが、今や舞台にいること忘れて、大好きな如月さんにぴょんぴょん抱きつくの。あー、可愛い!」
「うぐっ、弥生ちゃん、それはもう忘れて」
「こんな面白いこと、絶対忘れられなーい!あはは!」
その後も弥生を中心に明るくおしゃべりを続け、あっという間に別荘に到着した。