Bravissima!ブラヴィッシマ
聖と芽衣の《ラ・カンパネラ》の動画は、これまで以上に反響があった。

『すごい!天才同志のデュオ!』
『コンマスさん、更にグレードアップしてる』
『このピアニストだれ?』
『なんか最強コンビって感じ』
『他にも色々弾いて欲しい!』

理事長からも『公平、やるじゃないか』と電話があり、佐賀教授からも連絡がきた。

『高瀬くん、予想以上の演奏だったよ。この二人はすごい掛け合わせだな。うちの生徒にありがたい機会をもらって、本当に感謝しているよ』
「こちらこそ。佐賀先生、素晴らしい生徒さんを紹介してくださってありがとうございました」
『まだ他にも撮影するんだろう?お世話になるね。よろしく頼むよ』
「はい。ところで先生。木村さんは間違いなく並外れたピアニストだと思うのですが、本人はあまり自覚がないのが気になって……。どうしてなのでしょうか?彼女なら、コンクールタイトル総なめのピアニストですよね?」

すると電話の向こうで、うーん……と声のトーンが下がった。

『実はそうでもないんだよ。そこが私の懸念事項でね。だから今回の動画撮影が、彼女が変わるきっかけになればと願っているんだ。そんな訳で、どうか高瀬くんも彼女を見守ってやって欲しい。何かあればいつでも相談してくれていいから』
「はあ、分かりました」

腑に落ちないながらも、公平はそう返事をして電話を切った。
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