Bravissima!ブラヴィッシマ
「あー、腹減った」

そう言いながら階段を下りてきた聖の声に、ハッと我に返った芽衣が手を止める。

「あれ?ここ、どこ?」

小さく呟いてキョロキョロしている。

公平はたまらず笑い出した。

「芽衣ちゃん、没頭してたもんね。ここは聖の別荘。今日は合宿初日で現在午後3時」

3時ー?!と、聖と芽衣が声を揃えた。

「どうりで腹が減ってる訳だ」
「はいはい。すぐ用意するよ。芽衣ちゃんも、ダイニングに座って待ってて」

公平がカウンターキッチンに行くと、芽衣がついてきた。

「私もお手伝いします」
「そう?ありがとう。じゃあスープを温めてよそってくれる?あと、冷蔵庫にサラダも入ってるんだ」
「はい、分かりました」

公平はパスタを茹でると、作ってあったソースを絡めて盛り付ける。

「どうぞ、ジェノベーゼパスタ。ここは新鮮な食材が豊富だからね、味は保証する」
「すごい!彩も良くて美味しそう。いただきます」

芽衣は目を輝かせてから、くるくるとフォークで巻いて口に入れる。

「うん、とっても美味しいです!高瀬さん、このソースを1から作ったんですか?」
「まあね、自分好みの味にしたくて」
「本当にすごいです。あー、高瀬さんのお料理、毎日食べられたらなあ」
「ははっ!1週間だけなら希望を叶えよう。合宿中は俺が料理を担当するよ」
「えっ、いいんですか?うわー、とっても楽しみ!」
「そんなに喜んでもらえると、作り甲斐があるよ。聖なんてもう慣れちゃって、今更うまいとも言ってくれない。こいつ、結婚しても奥さんの手料理を当たり前に食べて、愛想尽かされるだろうな」

じとっと公平が聖を横目で睨むと、黙々と食べていた聖が顔を上げる。

「結婚しなければいいだろ?公平の手料理がたまに食べられればそれでいい」
「俺は嫌だよ!愛する奥さんと毎日一緒に料理したいのに、何が悲しくてお前にも食べさせなきゃいけないんだよ」
「えー、そう言わずにさ。頼むよ、公平」
「嫌だ。自分でどうにかしろ」
「俺より女を取るのかよ?」
「当たり前だ!まったくもう……」

そう言いつつも公平は、聖と芽衣の為に食後のコーヒーを淹れた。
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