Bravissima!ブラヴィッシマ
ひたすら基礎練習をしていると、階段から足音が聞こえてきて芽衣は手を止めた。
「ふわー、ねむ……」
部屋着姿でボサボサ頭の聖が、寝ぼけまなこで下りてくる。
「おはようございます」
「おはよ。あれ?公平は?」
「食料品の買い出しに行かれました。すぐに朝食を用意しますね。座っててください」
芽衣はキッチンへ行き、公平が作ってくれたオムレツとクロワッサンを温めると、サラダやフルーツと一緒にテーブルに運んだ。
「どうぞ。今、オレンジも搾りますね」
「ん、サンキュー」
聖が食べている間に、芽衣はドリップコーヒーをじっくりと淹れる。
カップ2つに注いで聖の向かい側に座った。
「食後のコーヒーもどうぞ」
「ありがとう」
聖はコーヒーを飲みながら芽衣の様子をそっとうかがう。
(こうして二人切りになるのって、ひょっとして初めてじゃないか?)
そう思った途端に緊張してきた。
「えっと、あのさ」
「はい、なんでしょう?」
沈黙に耐えかねて声をかけたはいいが、何を言えばいいのか分からない。
「うん、その……。あ、名前!」
「はい?名前がどうかしましたか?」
「やっぱり《イスラメイ》が弾けるからその名前にしたのか?」
すると芽衣はキョトンとしたあと、堪え切れずに笑い出す。
「あはは!如月さん、おかし過ぎます。生まれてすぐに《イスラメイ》が弾けたら、聖徳太子もびっくりですよ」
「あ、そうか」
聖はバツが悪そうに顔を伏せた。
「5月です」
「え?」
「5月生まれだから、メイって」
「ああ、なるほど」
「如月さんは?2月生まれなんですか?」
は?と今度は聖が固まる。
「いや、おかしいだろ。如月って、名字だぞ?」
「あ、そうか!あはは、失礼しました」
「でもまあ、俺も誕生日に由来してる」
「そうなんですか?お誕生日っていつ?」
「……12月25日」
「12月25日って、ええ?!クリスマス?」
芽衣は興奮気味に言葉を続けた。
「聖なる日ってことですよね、素敵!え、でもクリスマスがお誕生日って。3日前じゃないですか。大変!私、何もお祝い出来なくて」
「いいよ、別に。男がこの歳になって誕生日祝ってもらうのも恥ずかしい。それにケーキを買いに行っても、クリスマスケーキしか売ってない。バースデーケーキじゃなくてひんしゅく買うだけだ」
「あはは!お上手です。いえ、笑いごとじゃないですね、すみません」
笑いを収めてから、改めて芽衣はしみじみと呟く。
「でも本当に素敵。聖なるクリスマスが名前の由来なんて」
そしてふと思い出したように顔を上げて聖を見た。
「私の友達に、弥生ちゃんって子がいるんです。如月さんと結婚したらお似合いじゃないですか?」
「ああ、如月 弥生ってことか」
「ええ。どうですか?弥生ちゃんをお嫁さんに」
「いや、俺、結婚に絶対向いてないから。ヴァイオリン弾いてると話しかけられても気づかなくて、すぐに愛想尽かされるよ」
「それ私もです。何時間も弾き続けて、ご飯も作らないし家事もほったらかしになると思います」
「やっかいだよな。きっと『ヴァイオリンと私、どっちが大事なの?!』って詰め寄られるのがオチだ」
うんうんと芽衣も頷く。
「私、もう音楽と結婚したと思うことにします」
「そうだな、俺もそうしよう。さてと!それでは愛するヴァイオリンのもとへ行こうかな」
「ふふ、私も愛しのピアノのところに戻ります」
二人は笑い合って席を立った。
「ふわー、ねむ……」
部屋着姿でボサボサ頭の聖が、寝ぼけまなこで下りてくる。
「おはようございます」
「おはよ。あれ?公平は?」
「食料品の買い出しに行かれました。すぐに朝食を用意しますね。座っててください」
芽衣はキッチンへ行き、公平が作ってくれたオムレツとクロワッサンを温めると、サラダやフルーツと一緒にテーブルに運んだ。
「どうぞ。今、オレンジも搾りますね」
「ん、サンキュー」
聖が食べている間に、芽衣はドリップコーヒーをじっくりと淹れる。
カップ2つに注いで聖の向かい側に座った。
「食後のコーヒーもどうぞ」
「ありがとう」
聖はコーヒーを飲みながら芽衣の様子をそっとうかがう。
(こうして二人切りになるのって、ひょっとして初めてじゃないか?)
そう思った途端に緊張してきた。
「えっと、あのさ」
「はい、なんでしょう?」
沈黙に耐えかねて声をかけたはいいが、何を言えばいいのか分からない。
「うん、その……。あ、名前!」
「はい?名前がどうかしましたか?」
「やっぱり《イスラメイ》が弾けるからその名前にしたのか?」
すると芽衣はキョトンとしたあと、堪え切れずに笑い出す。
「あはは!如月さん、おかし過ぎます。生まれてすぐに《イスラメイ》が弾けたら、聖徳太子もびっくりですよ」
「あ、そうか」
聖はバツが悪そうに顔を伏せた。
「5月です」
「え?」
「5月生まれだから、メイって」
「ああ、なるほど」
「如月さんは?2月生まれなんですか?」
は?と今度は聖が固まる。
「いや、おかしいだろ。如月って、名字だぞ?」
「あ、そうか!あはは、失礼しました」
「でもまあ、俺も誕生日に由来してる」
「そうなんですか?お誕生日っていつ?」
「……12月25日」
「12月25日って、ええ?!クリスマス?」
芽衣は興奮気味に言葉を続けた。
「聖なる日ってことですよね、素敵!え、でもクリスマスがお誕生日って。3日前じゃないですか。大変!私、何もお祝い出来なくて」
「いいよ、別に。男がこの歳になって誕生日祝ってもらうのも恥ずかしい。それにケーキを買いに行っても、クリスマスケーキしか売ってない。バースデーケーキじゃなくてひんしゅく買うだけだ」
「あはは!お上手です。いえ、笑いごとじゃないですね、すみません」
笑いを収めてから、改めて芽衣はしみじみと呟く。
「でも本当に素敵。聖なるクリスマスが名前の由来なんて」
そしてふと思い出したように顔を上げて聖を見た。
「私の友達に、弥生ちゃんって子がいるんです。如月さんと結婚したらお似合いじゃないですか?」
「ああ、如月 弥生ってことか」
「ええ。どうですか?弥生ちゃんをお嫁さんに」
「いや、俺、結婚に絶対向いてないから。ヴァイオリン弾いてると話しかけられても気づかなくて、すぐに愛想尽かされるよ」
「それ私もです。何時間も弾き続けて、ご飯も作らないし家事もほったらかしになると思います」
「やっかいだよな。きっと『ヴァイオリンと私、どっちが大事なの?!』って詰め寄られるのがオチだ」
うんうんと芽衣も頷く。
「私、もう音楽と結婚したと思うことにします」
「そうだな、俺もそうしよう。さてと!それでは愛するヴァイオリンのもとへ行こうかな」
「ふふ、私も愛しのピアノのところに戻ります」
二人は笑い合って席を立った。