Bravissima!ブラヴィッシマ
(もう、何がなんだか分からない)

ドレッサーの前に座り、鏡に映る自分に半泣きになる。

芽衣はされるがままにヘアメイクを整えてもらっていた。

「どうですか?お嬢様。ハーフアップと迷ったんですけど、ゆるふわポニーテールにしてみました」
「はい、もう、何でもいいです」
「まあ、そんなお顔なさらないで。とっても可愛らしいのに」
「すみません、私なんかにこんなに手をかけていただいて」
「あら、自信持ってくださいね。今夜は聖様のお隣に並ぶ、魅力的なレディなんですから」
「そ、そんな大役、こなせそうにありません。そもそもどういうお芝居なんですか?その役柄は」

スタッフは拍子抜けしたように鏡の中の芽衣を見つめてから、にっこりと笑いかける。

「今夜は王子様にエスコートされるお姫様の役ですわ。どうぞ素敵な夜を」

そう言ってスタッフは、芽衣の手を引いて再びソファのある部屋へと連れて行く。

そこにはタキシードに身を包んだ聖と公平の姿があった。

「わあ、お二人ともかっこいい」

思わず呟くと、二人は芽衣を振り返る。

「芽衣ちゃんこそ、すごく綺麗だよ。じゃあ行こうか」

公平はそう言うと聖を振り返り、クイッと顔を傾げて促した。

聖が芽衣の右隣に歩み出て、左肘を差し出す。

「行くぞ」
「あ、はい」

芽衣はそっと聖の腕に手を添えて歩き出した。
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