Bravissima!ブラヴィッシマ
「うわ、すごっ!」

如月フィルの公式動画サイトに、聖のソロ演奏をアップした翌日。

事務局のデスクでサイトをチェックしていた公平は思わず目を剥いた。

アクセス数とコメントがとてつもなく多い。

『かっこいい!』『素敵!』『イケメン!』
『生でこのコンマスさんを見に行きたーい』
という言葉が並ぶ中、クラシックファンと思われる人からのコメントも見受けられた。

『この曲をこんなに鮮やかに弾くとは』
『技巧の解説もあるのがいいですね』
『右手は美しいレガート、同時に左手は主旋律をピチカートしながらの伴奏アルペジオ。もう神技です!』
『別の曲も聴いてみたい』
『パガニーニとか、ラヴェルのツィガーヌとか?』
『いいですねー!バッハのシャコンヌもぜひ!』

予想以上の反響に驚きつつ、公平は一つ一つのコメントに目を通し、考えを巡らせる。

(聖の見た目のかっこ良さが話題になるのは思惑通りだけど、ちゃんと演奏技術を見てくれてる人もいるんだ。それだけ聖がすごいってことだけど)

この企画はなかなかの妙案だったかもしれない。
そう思い、公平はこれをシリーズ化して継続しようと聖に提案することにした。

「えー、他にもやるのかよ?」

練習室に顔を出して話を切り出すと、聖は面倒くさそうに顔をしかめる。

「想像以上に好評だったんだ。如月フィルが注目されるチャンスだぞ?」
「いや、だって。俺のソロなんて恥ずかしくて大々的に注目されたくない」
「ええー?!聖、お前にもそんな恥じらいがあったのか?」
「どういう意味だよ?!」

やばい、機嫌を損ねては……と、公平は咳払いで誤魔化した。

「とにかく、あともう数曲頼むよ。な?これも如月フィルの為だと思ってさ」
「……仕方ないな。あんまり注目されないようにしてくれよ?」
「うん、分かった」

取り敢えずそう言っておく。

「じゃあ、今日は?何を弾けばいいんだ?」

早速左肩に楽器を載せてチューニングする聖に、公平はこのチャンスを逃すまいと身を乗り出した。

「1番リクエストが多かった、パガニーニのカプリース24番」
「おまっ……、鬼か?!」
「なんだ、弾けないのか?」
「弾けるわ!」

ギラッと目つきを変えて弓を構える聖に、公平はニヤリとしながら撮影を始めた。
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