Bravissima!ブラヴィッシマ
客席は綺麗な装いのゲストで満席。
誰もが明るい表情でおしゃべりしながら、演奏を待ち切れない様子だった。

舞台に目をやると、オーケストラの配置は、やや椅子が少なめに感じる。

それでもここでオーケストラの演奏が聴けることは、地元の人達にとってありがたいことに違いないと芽衣は思った。

やがて開演のブザーが鳴り、客席は静まり返る。

団員達が入場して、チューニングを始めた。

それだけで早くも芽衣はワクワクが止まらない。

指揮者が登場し、観客は期待と歓迎を込めて大きな拍手を送る。

そして演奏が始まった。

ホルスト作曲 組曲《惑星》より「木星」

プッチーニ作曲 歌劇《トゥーランドット》より 「誰も寝てはならぬ」

ヴェルディ作曲 歌劇《アイーダ》より「凱旋行進曲」

ラヴェル作曲《ボレロ》

ベートーヴェン作曲 《交響曲第9番》第4楽章

どれもこれもが大曲で、この上なく贅沢なプログラム。

芽衣は終始感激して聴き入り、大きな拍手を送っていた。

「はあ、もう、大満足です。まさか第9を合唱つきで聴けるなんて!これで気持ち良く年を越せます」

席を立って出口へと向かいながら、芽衣は余韻に浸って幸せそうに微笑む。

「あー、この感動を今すぐ音にしたい。帰ったら弾きまくります」
「ははは!なんかスイッチ入ったな」
「もう入りまくりです。手、温めておこう」

早速両手を握ってほぐし始めた芽衣に笑って、聖はいたずらっぽく話しかけた。

「じゃあさ、ちょっと雰囲気変えていつもと違う場所で弾きまくらない?」
「え?どういうことですか?」
「ま、着いてからのお楽しみ」
「またそれですか?もう」

仕方なく芽衣は車に揺られていた。
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