Bravissima!ブラヴィッシマ
「え?ここってさっきのホテルですよね?」
着いたよと公平に言われて顔を上げた芽衣は、コンサートの前にお茶を飲んで着替えたホテルに戻って来たことに気づく。
(あ、衣装を返すのかな)
そう思いながら聖と公平について行くと、たどり着いたのはなんとチャペルだった。
「ええ?!どうしてここへ?」
「ん?いつもと違う場所って言っただろ」
「ですけど、まさかここで?って、如月さん、楽器持って来てたんですか?」
「いいから、早く準備しろ」
急かされて取り敢えず芽衣は前方のピアノの前に座った。
ふたを開けて軽く音を出してみると、気持ち良く響く。
(すごい。チャペルってこんなに音響いいんだ)
嬉しくて流れるように指を走らせた。
「そろそろいいか?」
「はい」
聖に声をかけられてチューニングする。
「えっと、何を弾くんでしょうか?」
すると公平が二人に楽譜を配った。
「木星にトゥーランドットにアイーダにボレロって、さっきのプログラム丸パクリじゃないですか」
「あはは!いいじゃないか。余韻に浸るにはうってつけだろ?」
「そうですけど」
「ほら、1発撮りいくぞ」
「えっ、動画撮るんですか?」
「もちろん。撮れ高いいぜー、きっと」
聖はニヤリと笑い、公平は手早く撮影のセッティングを整えた。
「なんだ、そういうことだったんですね。お二人とも最初からこのつもりで準備されてたんですか?」
「まあな。ここのチャペルは、結婚式がない時はミニコンサートで使われたりもしてるんだ。たまにはこういうところで撮影するのもいいだろ?せっかく衣装着てるしもったいないから」
「まあ、確かに」
「だろ?じゃ、木星からな。いくぞ、イスラメイ」
「紛らわしいです。木星ですね。いきます、木村 芽衣」
そして二人は息の合った演奏を次々と繰り広げる。
さすがに第9はやめて、代わりにこれを、と公平が楽譜を渡した。
モーツァルト作曲の歌劇《魔笛》より「夜の女王のアリア」復讐の炎は地獄のように我が心に燃え
恐ろしく高い音域を超絶技巧のコロラトゥーラで歌う曲で、世界でも歌いこなせる人は少ない難曲である。
聖はその高音をヴァイオリンで美しく響かせた。
(はあー、なんて透明感。もう身体中がしびれる)
うっとりと聴き惚れつつ演奏を終えた芽衣は、急に聞こえてきた拍手に驚いて振り返った。
いつの間にか音に誘われて聴きに来た観客が、笑顔で手を叩いている。
「えっ!」
芽衣は慌てて立ち上がり、聖と共にお辞儀をする。
「素晴らしい!」
「とっても素敵でした!」
口々に称賛の言葉をかけられる中、芽衣は後方に立っている女性スタッフを見つける。
コンサートに行く前にドレスを選んでヘアメイクをしてくれたスタッフだった。
誰よりも嬉しそうに芽衣に満面の笑みを向けてくれている。
芽衣はもう一度深々と頭を下げた。
着いたよと公平に言われて顔を上げた芽衣は、コンサートの前にお茶を飲んで着替えたホテルに戻って来たことに気づく。
(あ、衣装を返すのかな)
そう思いながら聖と公平について行くと、たどり着いたのはなんとチャペルだった。
「ええ?!どうしてここへ?」
「ん?いつもと違う場所って言っただろ」
「ですけど、まさかここで?って、如月さん、楽器持って来てたんですか?」
「いいから、早く準備しろ」
急かされて取り敢えず芽衣は前方のピアノの前に座った。
ふたを開けて軽く音を出してみると、気持ち良く響く。
(すごい。チャペルってこんなに音響いいんだ)
嬉しくて流れるように指を走らせた。
「そろそろいいか?」
「はい」
聖に声をかけられてチューニングする。
「えっと、何を弾くんでしょうか?」
すると公平が二人に楽譜を配った。
「木星にトゥーランドットにアイーダにボレロって、さっきのプログラム丸パクリじゃないですか」
「あはは!いいじゃないか。余韻に浸るにはうってつけだろ?」
「そうですけど」
「ほら、1発撮りいくぞ」
「えっ、動画撮るんですか?」
「もちろん。撮れ高いいぜー、きっと」
聖はニヤリと笑い、公平は手早く撮影のセッティングを整えた。
「なんだ、そういうことだったんですね。お二人とも最初からこのつもりで準備されてたんですか?」
「まあな。ここのチャペルは、結婚式がない時はミニコンサートで使われたりもしてるんだ。たまにはこういうところで撮影するのもいいだろ?せっかく衣装着てるしもったいないから」
「まあ、確かに」
「だろ?じゃ、木星からな。いくぞ、イスラメイ」
「紛らわしいです。木星ですね。いきます、木村 芽衣」
そして二人は息の合った演奏を次々と繰り広げる。
さすがに第9はやめて、代わりにこれを、と公平が楽譜を渡した。
モーツァルト作曲の歌劇《魔笛》より「夜の女王のアリア」復讐の炎は地獄のように我が心に燃え
恐ろしく高い音域を超絶技巧のコロラトゥーラで歌う曲で、世界でも歌いこなせる人は少ない難曲である。
聖はその高音をヴァイオリンで美しく響かせた。
(はあー、なんて透明感。もう身体中がしびれる)
うっとりと聴き惚れつつ演奏を終えた芽衣は、急に聞こえてきた拍手に驚いて振り返った。
いつの間にか音に誘われて聴きに来た観客が、笑顔で手を叩いている。
「えっ!」
芽衣は慌てて立ち上がり、聖と共にお辞儀をする。
「素晴らしい!」
「とっても素敵でした!」
口々に称賛の言葉をかけられる中、芽衣は後方に立っている女性スタッフを見つける。
コンサートに行く前にドレスを選んでヘアメイクをしてくれたスタッフだった。
誰よりも嬉しそうに芽衣に満面の笑みを向けてくれている。
芽衣はもう一度深々と頭を下げた。