Bravissima!ブラヴィッシマ
「大丈夫か?」

ひざまずいて芽衣の顔を覗き込む。

芽衣はもはや顔を真っ赤に上気させ、苦しそうに息を繰り返していた。

水は飲んでくれそうにない。
せめて身体の締めつけを楽にしてやらないと。

「ちょっとごめん」

聖は左手を芽衣の背中の下に入れるとグッと抱き寄せ、右手でドレスのファスナーを下ろした。

もう一度そっと身体を寝かせると、芽衣はふう、と大きく息をつく。

ドレスの胸元が開き、綺麗な鎖骨が目についた。

聖はグッと唇を引き結んで、湧き上がる欲望を押し留める。

(いかん、ここから離れないと)

そう思うが、芽衣をこのまま一人にするのも心配だ。

自分がウイスキーのグラスを近くに置いたばかりにこんなことになったのだから。

(しばらくそばにいてやらないと。でも果たして理性が保てるかどうか)

その時、芽衣が苦しそうに「ん……」と顔をしかめた。

「大丈夫か?気分悪い?」
「喉が、熱くて……。焼けそう」
「待ってろ、水を持ってくるから」
「やだ、行かないで……」
「すぐ戻るから。な?」

優しく頭をなでて言い聞かせると、芽衣はコクンと頷く。

「いい子だ。少しだけ待ってて」

聖は立ち上がると急いでキッチンへ行き、冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出してまた芽衣の部屋に戻った。

「ほら、冷たい水。飲めるか?」

芽衣の肩に腕を回して上半身を起き上がらせると、芽衣はギュッと目をつぶって身をよじり、ベッドに倒れ込んだ。

「どうした?気持ち悪い?」

芽衣は肩で息をしながら苦しそうに頷く。

どうやら身体を起こすと酔いが回るらしかった。

聖は芽衣の身体を起こすのを諦める。

だが、横たわったままでは水が飲めない。

芽衣はますます顔を赤らめて、荒い息を繰り返している。

聖は意を決すると、ペットボトルの水を口に含み、芽衣に覆い被さった。

(……ごめん)

心の中で呟いてから、芽衣に深く口づける。

そのまま口移しでゆっくりと水を飲ませた。

ゴクリと喉を鳴らした芽衣が、ほっとしたように息をついて身体の力を抜く。

芽衣はそのままスーッと眠りに落ちていった。
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