Bravissima!ブラヴィッシマ
いつも共に
翌朝。

寝不足のままフラフラと階段を下りた聖は、公平と楽しそうに笑いながら朝食の準備をしている芽衣の姿にホッとする。

昨夜は、眠りに落ちた芽衣のその後が心配で、明け方までベッドの横で付き添っていた。

顔色も良くスヤスヤと呼吸も安定してきて、これなら大丈夫そうだと自分の部屋に引き揚げ、そのままボスッとベッドに飛び込んだのが2時間前のこと。

本当はまだ寝ていたかったが、芽衣の体調が心配で無理やり起きてきた。

二日酔いが酷いのでは?と思っていたが、公平と明るく会話している芽衣はいつもと変わりない。

それどころか、酔った記憶もなさそうに見えた。

「あ、おはようございます」
「お、早いな聖。おはよう」

二人に声をかけられ、聖も「おはよう」と答える。

早速三人で朝食を囲んだ。

「今日は午後に1本動画撮らせてくれ。何がいい?」

公平に聞かれて、芽衣は「うーん……」と考え込む。

「如月さん、夕べのアレでいいですか?」

急に芽衣に顔を覗き込まれて、聖はドキッとした。

「え!夕べのアレって、まさか……」
「あれ?ひょっとして覚えてないですか?」
「いや、俺は覚えてるけど……」
「私ももちろん覚えてますよ。じゃあ、アレやりましょ!」
「アレ……。夕べのアレ?」
「そう!夕べのアレです。楽しみー!」

違う、絶対に違う。
今、己の頭の中に浮かんでいる夕べのアレとは断じて違う。

そう分かっていても、聖の脳裏には芽衣とのアレが焼きついていた。

思わず唇に手をやる。
柔らかい芽衣の唇の感触が思い出された。

(いかん!俺は一体何を……。アレは違うんだ。そう、アレはソレとは違う)

ブンブンと頭を振っていると、芽衣が心配そうに声をかけてきた。

「如月さん?やっぱりアレは嫌ですか?」
「いや、大丈夫。俺もアレは大好きだ」
「良かった!じゃあ早くやりたいですね」
「ああ、やりたい。……って、アレはドレのこと?」

は?と芽衣はキョトンとする。

「大丈夫ですか?如月さん。まだ寝ぼけてます?」
「う、うん。そうかも」
「それなら撮影は午後からにしましょ。午前中は分担してお掃除とお洗濯にして。じゃあ今回も『ひめこ』で決めますよー」

そう言って芽衣は、あみだくじを作り始めた。

合宿中、家事の分担をあみだくじで決めているうちに、自然とそれを『ひめこ』と呼ぶようになっていた。

聖のひ、芽衣のめ、公平のこ、を取って『ひめこ』だ。

「はい!じゃあ好きなところに横線書いてくださいねー」

あみだくじの結果、今回は聖が掃除、芽衣が洗濯、公平が料理と決まった。
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