Bravissima!ブラヴィッシマ
午前中はそれぞれ家事をこなし、午後に基礎練習をしたあと、夕方に動画撮影することになった。
(アレってそうだ。ストラヴィンスキーだったな)
楽譜を前にようやく思い出した聖は、気持ちを入れ替える。
「よし。いくぞ、イスラメイ」
「はい!木村 芽衣、がんばります!」
気合いたっぷりに、二人は《火の鳥》の「カスチェイ王の魔の踊り」を弾く。
オーケストラで演奏される迫力あるこの曲を、たった二人で弾くには無理がある。
だがそんなことは感じさせないほど、ダイナミックに息を合わせた二人の演奏に、公平の肌は粟立った。
「はー、しびれる。この動画も反響あるだろうなー」
公平はホクホクしながら編集作業を始めた。
夕食のあと、公平はパソコンを開いて聖と芽衣に改めて動画を見せる。
「反響がすごいんだよ。毎日アップしてることもあって、再生回数がうなぎ上りだ。コメントも賑わってるよ。みんな演奏中の背景が気になるみたいで、『どこで撮影してる?もしや如月 聖の自宅か?』って」
「ふうん。そんなのが話題になるんだ」
「当たり前だろ?お前、自分のファンがどれくらいいるか知ってるか?」
「知らん」
「やれやれ。っていう俺もよく分からんけどね」
おい、と聖は真顔で突っ込む。
「ははは!それならファンクラブでも作るか?何人か数えやすい」
「アホ!作る訳ないだろ」
「でも動画のチャンネル登録者数はすごい勢いで伸びてるぞ。まあ、全部お前のおかげとは言えないけどな。芽衣ちゃんのファンもいるから」
ええ?!と芽衣は驚いて顔を上げた。
「まさか!そんなことあり得ませんよ」
「どうして?ほら、コメント見てよ。ピアノ伴奏がすごくいいって。顔が見えないから、誰だろうって色々憶測が飛び交ってる。ミステリアスなピアニストって呼ばれてるよ」
「そ、そんな。お恥ずかしい。高瀬さん、もう私は完全にフレームアウトして撮影してもらえませんか?」
「ダメだよそんなの。音だけしかしなかったら、実際に合わせてるのかどうか、信憑性なくなるし」
「じゃあ……、被り物して弾いてもいいですか?」
すると聖がブッと吹き出す。
「そっちの方が余計に話題になるぞ。まあ面白そうだから、俺もなんか被って弾いてもいいけどさ」
「二人ともやめてくれ。演奏はピカイチなのにビジュアルが変って、カオスだろ」
「そうか?ジルベスターコンサートは、カウントダウン終わったら干支の被り物で弾いてる人いるじゃないか」
「それなら許されるけどさ。この動画ではダメ」
「えー、俺もジルベスターやって被り物したい」
聖がごねると、公平は眉間にしわを寄せた。
「聖、ジルベスターをやりたいのか?それとも被り物して弾きたいのか?」
「どっちも。明日大みそかだろ?テレビのジルベスターコンサートに合わせて弾きながらカウントダウンしようぜ。で、年が明けたら被り物して初動画1発撮り。おおー、我ながらいいアイデア!」
はあー?と公平は呆れる。
だがよく見ると芽衣までがワクワクした様子で身を乗り出していた。
「如月さん、明日テレビ放送されるジルベスター、カウントダウンの曲はガーシュウィンなんですよ。『ラプソディ・イン・ブルー』!」
「マジか!これはもうやるしかないぜ、イスラメイ」
「はい!私も弾かせていただきます!」
「よし!じゃあ、明日早速買い出しだ。被り物探しにな」
「やったー!楽しみ」
え、マジで?と、公平は一人険しい顔でドン引きしていた。
(アレってそうだ。ストラヴィンスキーだったな)
楽譜を前にようやく思い出した聖は、気持ちを入れ替える。
「よし。いくぞ、イスラメイ」
「はい!木村 芽衣、がんばります!」
気合いたっぷりに、二人は《火の鳥》の「カスチェイ王の魔の踊り」を弾く。
オーケストラで演奏される迫力あるこの曲を、たった二人で弾くには無理がある。
だがそんなことは感じさせないほど、ダイナミックに息を合わせた二人の演奏に、公平の肌は粟立った。
「はー、しびれる。この動画も反響あるだろうなー」
公平はホクホクしながら編集作業を始めた。
夕食のあと、公平はパソコンを開いて聖と芽衣に改めて動画を見せる。
「反響がすごいんだよ。毎日アップしてることもあって、再生回数がうなぎ上りだ。コメントも賑わってるよ。みんな演奏中の背景が気になるみたいで、『どこで撮影してる?もしや如月 聖の自宅か?』って」
「ふうん。そんなのが話題になるんだ」
「当たり前だろ?お前、自分のファンがどれくらいいるか知ってるか?」
「知らん」
「やれやれ。っていう俺もよく分からんけどね」
おい、と聖は真顔で突っ込む。
「ははは!それならファンクラブでも作るか?何人か数えやすい」
「アホ!作る訳ないだろ」
「でも動画のチャンネル登録者数はすごい勢いで伸びてるぞ。まあ、全部お前のおかげとは言えないけどな。芽衣ちゃんのファンもいるから」
ええ?!と芽衣は驚いて顔を上げた。
「まさか!そんなことあり得ませんよ」
「どうして?ほら、コメント見てよ。ピアノ伴奏がすごくいいって。顔が見えないから、誰だろうって色々憶測が飛び交ってる。ミステリアスなピアニストって呼ばれてるよ」
「そ、そんな。お恥ずかしい。高瀬さん、もう私は完全にフレームアウトして撮影してもらえませんか?」
「ダメだよそんなの。音だけしかしなかったら、実際に合わせてるのかどうか、信憑性なくなるし」
「じゃあ……、被り物して弾いてもいいですか?」
すると聖がブッと吹き出す。
「そっちの方が余計に話題になるぞ。まあ面白そうだから、俺もなんか被って弾いてもいいけどさ」
「二人ともやめてくれ。演奏はピカイチなのにビジュアルが変って、カオスだろ」
「そうか?ジルベスターコンサートは、カウントダウン終わったら干支の被り物で弾いてる人いるじゃないか」
「それなら許されるけどさ。この動画ではダメ」
「えー、俺もジルベスターやって被り物したい」
聖がごねると、公平は眉間にしわを寄せた。
「聖、ジルベスターをやりたいのか?それとも被り物して弾きたいのか?」
「どっちも。明日大みそかだろ?テレビのジルベスターコンサートに合わせて弾きながらカウントダウンしようぜ。で、年が明けたら被り物して初動画1発撮り。おおー、我ながらいいアイデア!」
はあー?と公平は呆れる。
だがよく見ると芽衣までがワクワクした様子で身を乗り出していた。
「如月さん、明日テレビ放送されるジルベスター、カウントダウンの曲はガーシュウィンなんですよ。『ラプソディ・イン・ブルー』!」
「マジか!これはもうやるしかないぜ、イスラメイ」
「はい!私も弾かせていただきます!」
「よし!じゃあ、明日早速買い出しだ。被り物探しにな」
「やったー!楽しみ」
え、マジで?と、公平は一人険しい顔でドン引きしていた。