Bravissima!ブラヴィッシマ
パガニーニ作曲の《24のカプリース》より第24番

有名なメロディが様々なバリエーションで展開されるこの曲には、超絶技巧がぎっしりと詰まっている。

1ミリの誤差も許されないオクターブ奏法や畳みかける半音階、3度奏法からの10度奏法、左手ピチカート……

次々と繰り出される人並み外れたテクニックを見せつけるのではなく、あくまで美しい音楽を奏でる聖の演奏に、今更ながら公平は鳥肌が立つほど感動した。

「……お前、只者じゃないよな」

演奏が終わり、しばし呆然としたあと、公平がようやくポツリと呟く。

「褒めてるのか?それ」
「当たり前だ。最上級のな」

サンキューと聖は軽く笑う。

(1秒でも早くこれを公開したい。この感動を日本中の人達と分かち合いたい)

そう思い、公平はそそくさと練習室をあとにしてデスクに戻り、編集作業に没頭した。

公開するやいなや、またしてもものすごい勢いでコメントがつく。

『これ、本当に1発撮り?』
『信じられない。なんでこの人有名人じゃないの?』
『ソロでリサイタルやって欲しい!』
『とにかく生で聴きたい!次の如月フィルの公演、絶対に行く』

あまりの反響に、電話やメールでの問い合わせも増えた。

これはいよいよ理事長や常任指揮者にも知らせなければと、事務局でもバタバタと対応に追われる。

公平は聖の祖父でもある如月フィルの理事長に電話をかけた。
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