Bravissima!ブラヴィッシマ
いつしか曲は終盤に差し掛かり、聖も芽衣も気持ちを高ぶらせていた。

テレビ画面にアナログ時計の表示が現れる。

コツコツと進む秒針。

けれどそこに気を取られてはいけない。

音楽のテンポは秒針とは違うのだ。

二人はまるで本当にステージに立っているかのような感覚で指揮に合わせて盛り上がり、ラストの高い音を狙う。

ジャン!と最後の音を響かせた瞬間、テレビの向こうでキャノン砲から一気に紙吹雪が舞った。

「きゃー!やった!」
「ぴったり!ハマったなー」

聖と芽衣は両手を上げて喜ぶ。

「ハッピーニューイヤー!」
「最高の幕開け!あ、被り物しないと」
「ほんとほんと!」

子どものようにはしゃぐ二人に、公平は苦笑いする。

「明けましておめでとう。はい、サングラスにヘビの被り物」
「明けましておめでとうございます!高瀬さん、今年もよろしくお願いします」

芽衣は笑顔で公平から受け取ったサングラスをかけ、ヘビを頭上につけた帽子を被った。

「あっはは!お前似合うな、それ。俺もやろう」

聖も王様のような帽子に芽衣がヘビを縫いつけたものを被り、2025と縁取ったサングラスをかけた。

「うわ、ヤバい音楽家って感じ。芸術は爆発だー!みたいな」

冷静にそう言って、公平がパシャパシャと写真を撮る。

「三人で撮りましょうよ。高瀬さん、この風船持って」

Happy New Year!の風船やガーランド、おめでとう!の吹き出しなど、色んな物を手にして写真を撮った。

「よし、じゃあ弾き初めは《ラデツキー行進曲》な」

被り物をしたまま、新年最初の動画撮影を笑顔で終える。

そのまま三人で朝まで盛り上がり、初日の出を拝むと、倒れ込むようにそれぞれベッドで眠った。
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