Bravissima!ブラヴィッシマ
「おーい、何やってんの?朝っぱらから」

合宿最終日の朝。
あくびを噛み殺しながらリビングに下りて来た聖は、ウッドデッキにつながる大きなガラス戸を開けて芽衣に声をかけた。

「あ、おはようございます!見ての通り、雪だるま作ってます」
「この寒いのに、子どもかよ。色気はどうした?」
「それとこれとは別でーす!」

芽衣は手袋にマフラーの完全防備で、ひたすら雪を丸くしている。

「こんなにたくさん雪が積もってるんですよ?雪だるま作らなきゃダメじゃないですか」

鼻の頭を赤くしながら、芽衣は大きな雪のかたまりを2つ作った。

「あとはこれを重ねて……。わっ!重い」

調子に乗って大きくし過ぎたせいで、一人では持ち上げられない。

「しょうがないな。ほらよ」

聖はサンダルを履いてウッドデッキに下りると、かがんで雪のかたまりを持ち上げて重ねた。

「やったー!雪だるまの完成!あ、でも待って。枝を2本刺して、木の実で目を作って、口元はにっこり……。あ、バケツ!バケツを頭に被せなきゃ」
「そんなもん、ねーよ」
「残念ー。まあ、いっか!これでも充分可愛いし」

そう言って芽衣は、拾ってきた小石をいくつか雪だるまの前に置く。

ん?と聖が覗き込むと、そこには小石で『ひめこ』と並べられていた。

「出来た!写真撮ろうっと」

カシャカシャと雪だるまの写真を撮ると、芽衣は聖の腕を取る。

「如月さんも入って」

スマートフォンで自撮りすると、芽衣は満足そうに見返した。

「ふふっ、よく撮れてる。如月さんもこの写真いります?」
「いらない」
「欲しくなったら言ってくださいね」
「ならねーよ」

ぶっきらぼうに言って聖が背を向けると、くしゅん!と後ろで芽衣がくしゃみをした。

「ほら、風邪引くぞ。早く入れ」
「はーい」

リビングに入る二人を、雪だるまの『ひめこ』がにっこりと見送っていた。
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