Bravissima!ブラヴィッシマ
「公平、なかなかいい滑り出しだったな」

会議を終えると、理事長が笑顔で公平に声をかけた。

会議中は敢えて黙って皆の様子を見ていたが、その反応から手ごたえを感じているようだった。

「ありがとうございます、理事長。まだまだこれからですが、この企画が必ずや如月フィルにとって良いものとなるよう、尽力いたします」
「うん。わしも協力は惜しまんよ。何でも言って来なさい」
「はい。あ、それから理事長。お礼が遅くなりましたが、別荘を使わせていただきありがとうございました。とても有意義な時間になりました」
「ああ、動画を観たよ。ますます話題になっておるな。あの別荘はいつでも使えるようにしておくから、どんどん利用しなさい」
「そう言っていただけると大変心強いです。芽衣さんも理事長にお礼を伝えたいと言っていました」

それを聞いて理事長は途端に破顔する。

「そうかそうか。わしもまたイスラメイちゃんに会いたいのう。公平、今度食事の席でも設けてくれ」
「かしこまりました。いずれまた」
「楽しみにしておるよ」

理事長は公平の肩をポンと叩いて部屋を出て行く。

お辞儀をして見送ると、公平は事務局のオフィスに戻った。

いよいよ明日、ドリームステージは始動する。

抜かりなく準備を進めると、事務局の全員で明日からの動きを確認した。

そして翌日。

公式ホームページでのお知らせ、公共施設でのポスター掲示、情報誌への掲載、学校や音楽サークルへのチラシ配布など、一気に情報が開示される。

数日後には次々と応募フォームで申し込みがあった。

「予想以上だな。嬉しい悲鳴とはこのことだ」

せいぜい30件くらいかと思っていたが、1週間で既に50件以上の応募が集まっている。
このままいくと100件は軽く超えるだろう。

「えー、どうするかな。当日は5人ほどのステージを考えてたけど、もう少し増やすべきか……」

公平は腕を組んで考え込む。
だが、今結論を出す必要はない。

(様子を見ながら、募集を締め切ったあとの審査ミーティングで相談すればいいか)

そう思い、今は応募者のリスト作成や動画編集など、審査の準備を進めることにした。
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