Bravissima!ブラヴィッシマ
「おめでとう。卒業演奏会メンバーに選出されたよ」

レッスン室で佐賀教授に言われて、芽衣は思わず視線を落とす。

「ありがとうございます。がんばります」
「嬉しそうには見えないけどね」
「いえ、そんなことは」
「他のメンバーは飛び上がって喜んで、涙まで流してたよ」
「……すみません」
「謝ることはない。それに無理に出演する必要もね。どうする?辞退する?」

芽衣はうつむいたままじっと考え込んだ。

「いえ。選んでいただいたのに辞退するなんて、教授や他の生徒さんにも失礼に当たりますから。謹んで精一杯演奏させていただきます」
「そう、分かった。引き続き練習していこう」
「はい、よろしくお願いいたします」

思い詰めた表情の芽衣に、教授は小さくため息をつく。

(ようやく最近、明るい笑顔が増えていたのに)

聖との動画撮影で、音楽の楽しさを改めて見い出せていたのは事実だろう。

だがやはり、過去のトラウマはそう簡単には克服出来ないようだった。

(これでは安心して卒業させるどころか、心配で引き留めたくなるな)

なんとかしなければ。
教授はますます焦りを募らせた。
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