Bravissima!ブラヴィッシマ
「聖」
楽譜を管理するライブラリアンと、早速ドリームステージで使う楽譜の相談をしていた聖は、公平に呼ばれて手を止めた。
「なんだ?」
「ドリームステージ合格者のうち9名に連絡した。全員、喜んで参加するとのことだった。これから最後の合格者に連絡する。お前も来てくれ」
「……分かった」
頷いて二人で公平のデスクに行く。
公平はいつも連絡しているスマートフォンではなく、事務局の電話の受話器を上げた。
名簿に書かれた電話番号を確認しながら、数字を押す。
プル…という呼び出し音が、すぐ近くの聖にも聞こえてきた。
『はい、もしもし』
芽衣の声だ。
「もしもし、わたくし如月フィルハーモニー管弦楽団事務局長の高瀬と申します」
『あ、はい。木村です。いつもお世話になっております』
「こちらこそ。今お時間少しよろしいでしょうか?」
『はい、大丈夫です』
あくまで仕事の口調を崩さない公平に、芽衣は緊張気味の声で返事をする。
「先日は如月フィル主催のドリームステージにご応募いただきまして、誠にありがとうございました。厳選なる審査の結果、木村 芽衣さんが合格者に選ばれましたのでご報告いたします」
『えっ、私を選んでいただけたのでしょうか?』
「はい。審査員の全員から票を集めたのはあなただけです」
そう言ってから、公平はほんの少し顔をしかめた。
他の合格者に票数の話はしなかったのに、芽衣にだけは話してしまった。
いけない、と気を引き締める。
「いかがでしょうか?3月15日の午前中リハーサルと午後からの本番。どちらもご参加いただけますか?」
電話の向こうで少し息を呑む気配がしたあと、芽衣が答えた。
『はい、精一杯やらせていただきます。このような大変貴重な機会をいただき、心から感謝いたします。ありがとうございました』
「こちらこそ、ありがとうございます。詳しい流れは、このあとメールでお知らせいたします。何かあればいつでもご連絡ください。それでは、失礼いたします」
『はい、よろしくお願いいたします。失礼いたします』
受話器を置くと、公平は深く息をつく。
聖もしばらく黙っていた。
「佐賀先生の荒療治なんかじゃない。芽衣ちゃんは自分で望んで舞台に立つつもりなんだな」
「ああ」
だとしたら、引き止めることなど出来ない。
公平と聖は顔を見合わせて真剣に頷いた。
楽譜を管理するライブラリアンと、早速ドリームステージで使う楽譜の相談をしていた聖は、公平に呼ばれて手を止めた。
「なんだ?」
「ドリームステージ合格者のうち9名に連絡した。全員、喜んで参加するとのことだった。これから最後の合格者に連絡する。お前も来てくれ」
「……分かった」
頷いて二人で公平のデスクに行く。
公平はいつも連絡しているスマートフォンではなく、事務局の電話の受話器を上げた。
名簿に書かれた電話番号を確認しながら、数字を押す。
プル…という呼び出し音が、すぐ近くの聖にも聞こえてきた。
『はい、もしもし』
芽衣の声だ。
「もしもし、わたくし如月フィルハーモニー管弦楽団事務局長の高瀬と申します」
『あ、はい。木村です。いつもお世話になっております』
「こちらこそ。今お時間少しよろしいでしょうか?」
『はい、大丈夫です』
あくまで仕事の口調を崩さない公平に、芽衣は緊張気味の声で返事をする。
「先日は如月フィル主催のドリームステージにご応募いただきまして、誠にありがとうございました。厳選なる審査の結果、木村 芽衣さんが合格者に選ばれましたのでご報告いたします」
『えっ、私を選んでいただけたのでしょうか?』
「はい。審査員の全員から票を集めたのはあなただけです」
そう言ってから、公平はほんの少し顔をしかめた。
他の合格者に票数の話はしなかったのに、芽衣にだけは話してしまった。
いけない、と気を引き締める。
「いかがでしょうか?3月15日の午前中リハーサルと午後からの本番。どちらもご参加いただけますか?」
電話の向こうで少し息を呑む気配がしたあと、芽衣が答えた。
『はい、精一杯やらせていただきます。このような大変貴重な機会をいただき、心から感謝いたします。ありがとうございました』
「こちらこそ、ありがとうございます。詳しい流れは、このあとメールでお知らせいたします。何かあればいつでもご連絡ください。それでは、失礼いたします」
『はい、よろしくお願いいたします。失礼いたします』
受話器を置くと、公平は深く息をつく。
聖もしばらく黙っていた。
「佐賀先生の荒療治なんかじゃない。芽衣ちゃんは自分で望んで舞台に立つつもりなんだな」
「ああ」
だとしたら、引き止めることなど出来ない。
公平と聖は顔を見合わせて真剣に頷いた。