Bravissima!ブラヴィッシマ
「それではこれより、リハーサルを始めます。板付きの状態で本番と同じ流れでやりますので、どうぞよろしくお願いいたします」

ホールの客席側から、マイクで公平が声をかける。

オケの団員やマエストロも既に配置についていた。

MCの女性が下手から現れて、挨拶を省いた途中のセリフから始めた。

「それでは最初の演奏者をご紹介しましょう。皆様、大きな拍手でお迎えください」

すると小さな女の子がはにかんだ笑みを浮かべて現れた。

「まあ、可愛らしいお嬢さんですね。こんにちは。お名前は?」
「みかみ はなです」
「花さんですね。何歳ですか?」
「5さいです」
「今日はこのステージで、どんな夢を叶えたいですか?」
「おうたをうたいます!」

元気一杯の声に、楽団員達から拍手が起きた。

「楽しみですね。では早速準備してくださいね」
「はい!」
「それでは、三上 花さんのドリームステージ。歌は《にじ》です。どうぞ」

聖は、すぐ近くまでやって来た花に小さく声をかける。

「花ちゃん、いい?いくよ?」
「うん」

返事をする花ににっこり笑ってから、聖はマエストロに頷いた。

指揮棒が上がる。

オーケストラが美しい前奏を奏で始めた。

聖が歌の入りを花に頷いて合図する。

花は堂々と大きな声で歌い始めた。

(ひゃー、可愛いー。なんて尊い歌声。世界が浄化されるー。俺のけがれが洗い流されるー)

演奏しながら聖はとろけそうな表情を浮かべた。

マエストロもにこにこしながら、花に合わせて指揮を振っている。

演奏が終わると、マエストロは花の頭をなでて笑いかけた。

「上手だったよー。本番も楽しんでね」
「はい!」

団員達もメロメロになりながら拍手で見送った。

その後も順調にリハーサルは進み、ラスト一人となる。

トリを飾るのは、芽衣だった。
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