Bravissima!ブラヴィッシマ
「めーいー、やっほ!」
「弥生ちゃん!」
控え室で着替えを終えたところに、コンコンとノックの音がして弥生が顔を覗かせた。
「どうしたの?こんなところで」
「決まってるでしょ?芽衣の晴れ舞台を見に来たの」
「そんな……。だって弥生ちゃん、明日卒業演奏会でしょ?」
弥生は明日、学内のホールで行われる卒業演奏会の演奏者に選出されていた。
他のメンバーは、今頃必死で最後の追い込みをしているところだろう。
「んー?もうね、今更あがいたって無駄だもん。それよりも芽衣の演奏聴いた方が絶対テンション上がる!爆上がり!」
「やだ、弥生ちゃんてば。ロックのコンサートじゃないよ?」
「あはは!芽衣がロックを弾くのも見てみたいけどね。それよりちょっと!せっかく綺麗なドレスなのに、まさかそのおばさん結びで出る気なの?」
そう言って弥生は芽衣を鏡の前に座らせると、鞄の中からヘアアイロンを取り出した。
「弥生ちゃん、いつもそれ持ち歩いてるの?女子力高いね」
「芽衣が低すぎるの!その後どうなったの?色気は。手に入った?」
「あ!忘れてた」
「やれやれ……」
呆れたようにため息をついてから、弥生は芽衣の髪をヘアアイロンで巻いていく。
サイドの髪をねじりながら後ろでまとめると、指でほぐしてふんわりと整えた。
芽衣が軽く首を振ってみると、クルンとした毛先が肩で跳ねる。
弥生は鏡の中の芽衣に満足気に頷いた。
「うん!かーわいい!あとはメイクね」
弥生はメイクポーチを広げると、手早く芽衣の顔をブラシでなでていく。
「きゃはは!くすぐったい」
「こら、じっとしてて」
「だって、むずむずするんだもん」
「もう、緊張感の欠片もないわね。ほんと、芽衣は肝が据わってるわ」
え……、と芽衣は真顔に戻る。
「私、落ち着いてるように見える?」
「もちろん。芽衣はいっつも冷静だよね。私、あがり症だから羨ましいなって思ってたの」
「ええ?!弥生ちゃんこそ、いつも冷静に見えてたよ?」
「顔に出さないように、必死に堪えてたからね。でも手とか足とか、気づくとカタカタ震えてるよ」
「そうなんだ。知らなかった」
はい、出来た!と笑ってから、弥生は芽衣の両肩に手を置いて鏡越しに話し出す。
「緊張しない人なんていない。だって、その日のその瞬間の為に、膨大な時間ととてつもない努力をしてきたんだもの。想いが強ければ強いほど、その時が来るのが怖くなる。でもね、芽衣」
振り返った芽衣を、弥生は真っ直ぐに見つめる。
「音楽の神様は絶対に見捨てない。きっと幸せな世界に連れて行ってくれる。そう信じて、自分の気持ちを思い切り開放して来て」
そして最後に笑顔で付け加えた。
「大丈夫!失敗したって、命までは持ってかれやしないわよ」
芽衣は弥生の言葉を噛みしめた。
「うん、そうだね。弥生ちゃん、ありがとう!」
「よし!行って来い、芽衣!」
「うん!」
二人は笑顔で頷き合った。
「弥生ちゃん!」
控え室で着替えを終えたところに、コンコンとノックの音がして弥生が顔を覗かせた。
「どうしたの?こんなところで」
「決まってるでしょ?芽衣の晴れ舞台を見に来たの」
「そんな……。だって弥生ちゃん、明日卒業演奏会でしょ?」
弥生は明日、学内のホールで行われる卒業演奏会の演奏者に選出されていた。
他のメンバーは、今頃必死で最後の追い込みをしているところだろう。
「んー?もうね、今更あがいたって無駄だもん。それよりも芽衣の演奏聴いた方が絶対テンション上がる!爆上がり!」
「やだ、弥生ちゃんてば。ロックのコンサートじゃないよ?」
「あはは!芽衣がロックを弾くのも見てみたいけどね。それよりちょっと!せっかく綺麗なドレスなのに、まさかそのおばさん結びで出る気なの?」
そう言って弥生は芽衣を鏡の前に座らせると、鞄の中からヘアアイロンを取り出した。
「弥生ちゃん、いつもそれ持ち歩いてるの?女子力高いね」
「芽衣が低すぎるの!その後どうなったの?色気は。手に入った?」
「あ!忘れてた」
「やれやれ……」
呆れたようにため息をついてから、弥生は芽衣の髪をヘアアイロンで巻いていく。
サイドの髪をねじりながら後ろでまとめると、指でほぐしてふんわりと整えた。
芽衣が軽く首を振ってみると、クルンとした毛先が肩で跳ねる。
弥生は鏡の中の芽衣に満足気に頷いた。
「うん!かーわいい!あとはメイクね」
弥生はメイクポーチを広げると、手早く芽衣の顔をブラシでなでていく。
「きゃはは!くすぐったい」
「こら、じっとしてて」
「だって、むずむずするんだもん」
「もう、緊張感の欠片もないわね。ほんと、芽衣は肝が据わってるわ」
え……、と芽衣は真顔に戻る。
「私、落ち着いてるように見える?」
「もちろん。芽衣はいっつも冷静だよね。私、あがり症だから羨ましいなって思ってたの」
「ええ?!弥生ちゃんこそ、いつも冷静に見えてたよ?」
「顔に出さないように、必死に堪えてたからね。でも手とか足とか、気づくとカタカタ震えてるよ」
「そうなんだ。知らなかった」
はい、出来た!と笑ってから、弥生は芽衣の両肩に手を置いて鏡越しに話し出す。
「緊張しない人なんていない。だって、その日のその瞬間の為に、膨大な時間ととてつもない努力をしてきたんだもの。想いが強ければ強いほど、その時が来るのが怖くなる。でもね、芽衣」
振り返った芽衣を、弥生は真っ直ぐに見つめる。
「音楽の神様は絶対に見捨てない。きっと幸せな世界に連れて行ってくれる。そう信じて、自分の気持ちを思い切り開放して来て」
そして最後に笑顔で付け加えた。
「大丈夫!失敗したって、命までは持ってかれやしないわよ」
芽衣は弥生の言葉を噛みしめた。
「うん、そうだね。弥生ちゃん、ありがとう!」
「よし!行って来い、芽衣!」
「うん!」
二人は笑顔で頷き合った。