Bravissima!ブラヴィッシマ
全てをぶつけて
「皆様、本日は如月フィルハーモニー管弦楽団がお贈りする『ドリームステージ』に、ようこそお越しくださいました」

午後2時
いよいよ本番が始まった。

如月シンフォニーホールは満席。
司会者の自己紹介に、客席からは大きな拍手が起こった。

「今日ここで、音楽を愛する人達の夢が叶います。どうぞ最後までしっかりと、その夢舞台を見届けてください。それでは最初の演奏者をご紹介しましょう。皆様、大きな拍手でお迎えください」

小さな女の子、花が緊張の面持ちで現れ、「あら可愛い!」と客席から声が上がる。

硬い表情の花はマイクで自己紹介をしたあと、決められた立ち位置に歩いて行ってスタンバイした。

芽衣は舞台袖でその様子を見つめながら、花に「がんばれ!」とエールを送る。

ガチガチに固まったままの花に、大丈夫かな、と不安になった時、聖が笑顔で何やら花に話しかけた。

聖を振り返った花は、うん、と頷き、可愛らしい笑顔を見せる。

その姿に(もう大丈夫ね)と芽衣も微笑んだ。

演奏が始まり、花は生き生きと明るく歌い出す。

(素敵、なんて綺麗な歌声!)

芽衣はホール中に響き渡る透き通った花の声に感動して、涙ぐんだ。

トップバッターは大人でも緊張するというのに、たった5歳の花はこんなにも堂々としている。

(負けていられない)

勇気をもらった気がして、芽衣はギュッと拳を握りしめた。
< 92 / 145 >

この作品をシェア

pagetop