恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
「神崎さん、本当にごめん。後でまたちゃんと話をさせてほしい」
ちゃんとって、なんだろう。改めて『あれは気持ちのないキスだった』とでも言われるのだろうか。そんな話なら、私は聞きたくない。
「もう謝らないでください。それより、一緒にいてくださってありがとうございました。次にまた雷が鳴った時には、ひとりで対処できる気がします」
「ひとりで……そうだよな。でも、無理だけはしないように」
「わかりました。それじゃ、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
最後まで私の目を真っすぐ見ることなく、真城さんが私の部屋を出て行く。
いつもなら『俺に甘えて』とか『いつでも頼って』と言ってくれる彼が、今日に限ってそうしなかった。
食事に誘ってくれたり、ピンチに駆けつけてくれたりした時の彼とは別人になってしまったかのようだった。
……やっぱり、いつもの恋愛と同じパターンだったのかもしれない。
いいなと思ってくれたのは向こうからだったのに、抱きしめたりキスをした時の私の反応が男性の思惑通りにならなくて、一方的にがっかりされてフラれる。
私はきっと、筋金入りにかわいげのない女なのだ。真城さんも、今まで優しくして損したとか、そのうち会社で針ヶ谷さんのように悪口を――。